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29章Ⅰ心不全とは左心不全は低拍出、肺うっ血により生じる症状を引き起こし、右心不全は、全身の浮腫、とくに肝臓や腎臓、消化管浮腫による症状を引き起こすことが多い。3)収縮不全と拡張不全 左心室の収縮力が低下することにより、全身に血液が駆出できないために生じる心不全をHFrEFと呼ぶ。一般的に考えられている心不全は、このHFrEFを指すことが多かったが、最近では必ずしもそうでないことが明らかになっている。実際には、心収縮力が保持されているにもかかわらず、心不全症状を呈する患者が多く存在する。心収縮力低下を伴わない心不全は、心室の拡張能が低下しているために引き起こると考えられており、HFpEFと呼ばれている。以前は、HFpEFは、左室拡張不全(diastolic◆heart◆failure)と呼ばれていた。HFpEFを左室拡張不全と言わなくなった理由は、心不全の中に、安静時の心収縮機能・拡張機能ともに保たれているが、運動したときだけ拡張機能が低下して心不全症状をきたす心不全が存在することが、認識されてきたからである。そのような安静時の心収縮機能・拡張機能の持たれた心不全をHFpEFの中に分類したために、「拡張不全」と言わずに「収縮性の保たれた心不全」と言うようになったわけである。疫学研究では、HFrEFとHFpEFはほぼ同じ比率であることが示されている。 定義上HFrEFは、左室駆出率(left◆ventricular◆ejection◆fraction:LVEF)が40%未満、HFpEFはLVEFが50%以上とされているため、この40%以上50%未満の心不全をheart◆failure◆with◆midrange◆ejection◆fraction◆(HFmrEF)と呼ぶ。これは、HFpEFからHFrEFへの移行期を見ているものなのか、HFrEFからの回復期を見ているものなのか(heart◆failure◆with◆recovered◆EF:HFrecEF)なのか、それともHFmrEFという固有の心不全状態があるのか、いまだよくわかっていない。4)前方障害と後方障害 心不全では、まず心臓から出ていく動脈系(前方)と心臓に戻ってくる静脈系(後方)にその影響が及ぶが、それらをそれぞれ前方障害と後方障害と言う。この前方障害と後方障害という考え方は、一昔前の心不全の分類方法であり、現在のHFpEFとHFrEFに近い考え方である。実臨床における心不全自体のとらえ方としては、前方障害と後方障害は理にかなっている、と著者は考える。 心血管系を高速道路に例えれば、ETCを通過する前、例えば休日のため道路に車が殺到して、しかもETCの調子が少し悪くてETCに入る前に車が混雑するのが後方障害、ETCの調子が少し悪い上に、ETC以降の道路が工事のため3Leaning POINT▶p.174▶p.295Leaning POINT▶p.295

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