22❶肥大型心筋症(HCM)とは?① 心筋の構成タンパクの遺伝子の突然変異(mutation)です。アクチン、ミオシンなど、多くのタンパク質がありますが、そのうちの1つ、あるいは複数のタンパク質の遺伝子が突然変異してもHCM となります。また、遺伝子変異が同じでも、表現型(肥大の部位・程度)が個々にまったく異なる場合があります。② 心筋肥大が始まると、数年かけて肥大が完成します。数年~数十年経って、拡張型心筋症(DCM)様になり壁厚が薄くなってくる人がいます。③ 心尖部が肥大してくると、心電図で陰性Tが出現します。❷HCMの予後とフォローの心エコーで注意することは?① 基本的には良好な場合:投薬なしで経過観察のみ(年に1回のフォローは必要)。 HCMの壁運動はLVEFが正常でも、初期から長軸方向の収縮能が低下するため、スペックル・トラッキング法の評価が有用となります。②予後が悪くなる場合 ⅰ)心尖部瘤 心尖部瘤のできる原因は不明ですが、心室中部閉塞性肥大型心筋症(MVO)症例や心尖部壁厚が厚い症例に多い印象を持ちます。心尖部は描出不良であることが少ないため、心尖部にフォーカスを合わせることやカラードプラを用いて観察することが必要です。 ⅱ)閉塞性肥大型心筋症(HOCM) 非対称性中隔肥大に左室流出路狭窄を伴った病態です。本症例は僧帽弁収縮期前方運動(SAM)が必須であり、圧較差が25mmHg以上で有意な左室流出路狭窄と判断できます。安静時で流出路狭窄を認めなくてもバルサルバ負荷により誘発されることがあり、その場合はdynamic obstructionと評価します。 ⅲ)拡張相肥大型心筋症(DHCM) 原因は遺伝子異常や心筋の線維化、虚血などが指摘されていますが、明らかな原因は不明です。心エコーでは左室の拡大と壁運動低下、壁厚の不均一化に注意した検査が必要です。壁運動の低下は局所から始まり次第に左室全体に及ぶ場合と、初めからび慢性に壁運動低下が現れる場合があります。不均一な壁運動異常なら陳旧性心筋梗塞や心サルコイドーシスなどの鑑別が必要となります。心電図では胸部誘導R波の減高や、Q波の出現が認められます。《引用・参考文献》1) 日本心不全学会ガイドライン委員会. 日本心不全学会ステートメント:血中BNP やNT-proBNP 値を用いた心不全診療の留意点について. 2016. http://www.asas.or.jp/jhfs/topics/bnp201300403.html [春木康伸]医師からのワンポイント解説
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