18用語解説【 R progression 】 R progressionを日本語に直訳すると、R波の漸増(徐々に増す)という意味になります。通常、胸部誘導ではV1〜V5誘導にかけR波が漸増するのが一般的ですが、本症例心電図ではV1・V5誘導にかけてR波高がほぼ一定で、正常の胸部R progressionが認められていません。前壁中隔心筋梗塞で見られるPoor R progression(R波の増高不良)は、V1〜V3誘導のR波は低く、かつR増高不良となり本症例の心電図とは異なります。2)血液データと胸部X線所見 血液データ(表1)よりNT-proBNPの上昇を認め、心室壁の伸展ストレスの増大があることが示唆されます。NT-proBNPの値は440pg/mLであり、治療対象となる心不全である可能性があり、心エコー検査を含む検査を早期に実施し、原因検索を行わなければならないレベルです(図2)。また、腎機能の軽度低下(尿素窒素、クレアチニン高値)を認めます。BNP軽度の心不全の可能性があるので精査、経過観察治療対象となる心不全の可能性があるので精査あるいは専門医に紹介治療対象となる心不全の可能性が高いので精査あるいは専門医へ紹介040100200(pg/mL)18.4NT-proBNP125400900(pg/mL)心不全の可能性は低いが、可能ならば経過観察心不全の可能性は極めて低い図2BNP、NT-proBNP値の心不全診断へのカットオフ値(文献1より転載)項目結果値基準値単位判定総タンパク7.26.5-8.2g/dL総ビリルビン0.60.3-1.2mg/dLALP157104-338U/LAST(GOT)2610-40U/LALT(GPT)195-45U/LLDH176120-245U/Lγ-GTP112F 48以下U/L高値CPK102F 50-210U/L総コレステロール180150-219mg/dL中性脂肪13750-149mg/dLHDLコレステロール56F 40-90mg/dLLDL-C(計算)9770-139mg/dLHbA1c5.64.6-6.2%グルコース11170-109mg/dL高値尿酸6.6F 2.7-7.0mg/dL尿素窒素25.38.0-20.0mg/dL高値クレアチニン0.86F 0.46-0.82mg/dL高値項目結果値基準値単位判定ナトリウム142135-145mEq/Lカリウム4.53.5-5.0mEq/Lクロール10798-108mEq/LTSH3.670.50-5.00uIU/遊離T41.030.90-1.70ng/dLNT-proBNP440125以下pg/mL高値白血球80703500-9700個/uL赤血球444F 376-516104/uLヘモグロビン14F 11.2-15.2g/dLヘマトクリット41.8F 34.3-45.2%血小板1914.0-37.9104/uLMCV94F 80-101fLMCH31.5F 26.4-34.3pgMCHC33.5F 31.3-36.1%PT11.810.0-13.0秒PT-INR0.980.90-1.13APTT25.626.0-38.0秒低値表1血液データ
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