19Chapter 2心肥大と心拡大の意外に知られていない情報 胸部X線所見は、心胸郭比(CTR)52.4%と心拡大を認め、胸水は(-)です。心エコー検査前のチェックポイント❶心電図V1・V2誘導のR増高を認め、胸部誘導のR progressionを認めない。❷NT-proBNP高値❸X線にて心拡大を認める。 以上3点を念頭に、「心拡大の原因は? 肥大のタイプは均等、不均等? 心不全の原因は?(弁逆流も念頭に)」これらの原因を精査するつもりで検査に臨みましょう!心エコーカンファレンス1)1回目と2回目(1年後)の心エコーレポート診断名1回目#1 s/o HHD#2 Mild-moderate MR#3 Mild-moderate TR2回目#1 s/o HCM#2 Mild-moderate MR#3 Mild-Moderate TR1回目では高血圧性心疾患疑い(s/o HHD)で、2回目では肥大型心筋症疑い(s/o HCM)となっていますね。なぜ、診断名が異なるのでしょうか? わかる人!それは、1回目の検者は左室肥大のタイプを均等と判断し、2回目の検者(私)は不均等と判断したからです。そうですね。2回目の検査を行ったのが君だから、気づいていますね。1回目の検者は、高血圧があることからHHDと思いこんで検査をしてしまった可能性がありますね。ただ、2回目の中隔の計測値も少し違いますよ!えっ?! 何が違うんですか?じゃあ中隔をどこで計測したか教えてくれますか?図3-①の中隔部(黄矢印部)を計測しました。では、カラー(ドプラ)の画像を見てください。君が計測した中隔の中ほどに、黒く抜けた切れ込み箇所があります(図3-①)。そこにカラーをのせると血流シグナルが見えます(図3-②)。もう、わかりましたか? この部分に血流があることから、ここは肉柱の可能性が高いんです。中隔壁の計測で心筋とまぎらわしい構造物として、心室中隔の上部から自由壁へと伸びる肉柱と右室側に付着する調節帯があります。Sigmoid septumの場合も中隔肥厚の鑑別が困難なことがありますが、肥大型心筋症と誤認しないようにしましょう。心筋と肉柱の間には隙間があるはずなので、多方向からしっかり観察して、隙間を指摘できれば肉柱と判断できます!医師技師A医師技師A医師技師A医師
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