日本周産期循環管理研究会は2002年に、施設の垣根や新生児科・小児循環器科・小児科・産婦人科といった診療科の垣根を越え、NICUに入院する赤ちゃんたちを救命し、合併症を少しでも少なくするための循環管理を話し合うプラットフォームとなることを目指して設立されました。今では、全国各地での年1回の研究会総会に200名前後が参加する研究会に発展しています。この研究会で「根拠と総意に基づく未熟児動脈管開存症の治療ガイドライン(J-PreP)」や世界初の早産児における心臓超音波検査の多施設共同前向き研究である「早産児における左房容積および動脈管開存症評価(PLASE study)研究」などの科学的根拠を創出してきました。 毎年の研究会でのシンポジウムや教育講演のテーマなどは研究会メーリングリストによる事前アンケートや投票で決めています。医学的根拠の創出も大切ですが、日々のそれぞれのNICUで経験したことを共有しつつ、それぞれのNICUでの翌日からの診療に活かせる実践的な情報交換を目指してきました。 この研究会で白石 淳先生と川瀬昭彦先生が毎年担当してくださったのがピットフォールセッションです。このセッションは転帰を知った上で聞く症例報告ではありません。診断や治療が難しかった症例を時系列に沿って参加者全員で追体験し、アンサーパッドを用いてリアルタイム回答を途中で繰り返しながら、鑑別診断や確定診断する過程を臨場感を大切にシェアしています。悔いの残る経験を隠さず、全国各地のNICU仲間と共有することで、次に同じ状況の赤ちゃんに出会った人が同様のピットフォールに陥らず、悔いを残さず、よりよく診療できることを願った全員参加型のセッションと言えます。刊行によせて
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