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1胎児期の内分泌系の発達からみた「新生児内分泌」の重要性 3 わが国の出生に関する統計の2つの大きな特徴は、年間出生数と平均出生体重の減少にある。出生体重減少の原因は母体の栄養摂取量の不足、出産年齢の高齢化など多岐にわたるが、出生体重に及ぼす影響は早産児の増加ではなく、在胎週数の割に小さく生まれる児(SGA児)が増えていることのほうが大きい。SGA児の増加は将来のメタボリックシンドロームの罹患率を増すといった懸念が広がっているが、影響はそれだけではない。胎児期の成長障害は、出生体重の減少にとどまらず、臓器成熟の障害ももたらしうる。その性腺系への表れが、男児の尿道下裂の増加である 3)。胎児は内分泌系も未熟だと考えられがちだが、決して胎児は未熟ではない。少なくとも性腺系に関しては、胎児期初期の男児は思春期相当の性ホルモン分泌能を有している。とりわけ、胎児期の男性外性器の形成には、胎盤から放出されるヒト絨毛性ゴナドトロピン(human chorionic gonadotropin:hCG)が重要である。 hCGの刺激によって精巣から産生されたテストステロン、およびその活性型代謝産物であるジヒドロテストステロンが原始生殖器を陰茎・陰嚢といった男性外性器へと変換させる(図1)。胎盤機能不全によるhCGの減少は男性外性器の形成わが国では、尿道下裂が増えている男性外性器の形成には、胎盤から分泌されるhCGが重要な役割を果たしている。このため、胎盤機能不全によるSGA男児には尿道下裂・小陰茎などの外性器の異常が高率に発症する。男性外性器の形成図1未分化性腺ミュラー管Y染色体(SRY)テストステロン5-αreductase前立腺陰茎陰囊精巣上体・輸精管・精囊抗ミュラー管ホルモン(AMH)LH, hCG精巣尿生殖洞生殖結節生殖隆起生殖襞ウォルフ管ジヒドロテストステロン

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