4不全、すなわち尿道下裂・小陰茎などに直結しうる。また、このような胎児期の精巣機能の障害は成長後の思春期発来・妊孕性の獲得にも影響している可能性が懸念される 4)。 ステロイドとはステロイド核を有する化合物の総称であり、ステロイドホルモンにはグルココルチコイド・性ホルモン・ビタミンDなど多数存在する。このため、ステロイド療法という呼び方は科学的ではないが、実地臨床ではステロイド療法がグルココルチコイド療法を意味することが多いため、その慣例に従い、本書では「ステロイド療法」という語を「グルココルチコイド療法」に限定して用いることとする。 早産児診療におけるステロイド療法の位置付けは時代とともに変遷してきた。1990年代~2000年代前半は“ステロイド隆盛期”で、生後早期からのステロイド療法が早産児の合併症の軽減に直結するとの検討が多数報告された 5)。しかし、2000年代後半には“ステロイド反省期”に入った。生後早期のステロイド療法が腸管穿孔といった急性期の合併症 6)のみならず、脳性麻痺など神経学的後遺症の発症を増やすとの報告が相次いだ 7)ためだ。そして、2010年代になり、“ステロイド復権期”に入ったと言えよう。ここ数年、ヒドロコルチゾンの投与が予後を改善するといった報告が続々と現れ、新生児医療におけるステロイド療法への期待感は日々高まっている 8)。 さて、わが国の新生児医療におけるステロイド療法の見直しに大きく貢献したのが早産児晩期循環不全(late-onset circulatory collapse:LCC)である。本病態は2000年以降、症例報告が相次ぎ、一つの疾患概念として認められるようになった病態であり、わが国の新生児医療の一つの大きな成果である 9)。本病態の存在は、韓国など一部の地域では認知されているものの、いまだ世界各国で認められているとは言えないが、他の地域でも新生児医療のレベルが上昇すれば早晩認知されるであろう。 もう一つ、ステロイド療法が重要な病態と言えば、慢性肺疾患である。超早産児の救命率が向上した現在、慢性肺疾患の克服は早産児医療にとって最大の難問といっても過言ではあるまい。本書では、循環器・呼吸器疾患に対するステロイド療法についてそれぞれ、最新の知見に基づき解説する。早産児診療とステロイド療法
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