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1胎児期の内分泌系の発達からみた「新生児内分泌」の重要性 5 副腎皮質ホルモンの合成障害と言えば、先天性副腎過形成が有名だが、その他にも遺伝子異常に基づく新たな疾患概念が見出されている 10)。副腎の発生は性腺の発生と連携しているため、これらの病態では外性器異常を伴うことが少なくない。希少疾患に関しては、その存在を知っているか否かが診断の可能性を左右するため、新生児医療に携わる者にとって、知識のキャッチアップは欠かせない。 胎児にとっても甲状腺ホルモンは重要であり、とりわけ中枢神経系の発達に重要なホルモンである。一方、母体・胎盤に代謝機能の多くを依存している胎児にとって、基礎代謝を亢進させる甲状腺ホルモンは多量には必要ない。しかし、出生後はただちに、多量の甲状腺ホルモンを必要とすることになる。このため、胎児期には甲状腺ホルモンの産生能を徐々に発達させながらも、それを不活化するといった方法がとられている。さて、胎児と正期産新生児の間に位置する早産児の甲状腺機能はどうなっているのだろうか? 早産児の甲状腺機能で特徴的なことは、早産児一過性低サイロキシン血症(transient hypothyroxinemia of prematurity:THOP)と遅発性高甲状腺刺激ホルモン(thyroid-stimulating hormone:TSH)血症である。THOPに対する甲状腺ホルモン補充療法に関する考え方も時代とともに変遷してきた。1990年代、甲状腺ホルモンは中枢神経系の発達に必須のホルモンであり、低サイロキシン状態に対して甲状腺ホルモン薬を投与することは当然と考えられていた。このため、THOPに対する甲状腺薬投与の有用性を示そうとするランダム化比較試験(randomized controlled trial:RCT)が繰り返し行われたが、その有効性を示すことはできなかった 11)。これらの知見を受け、THOPは生理的な現象であり、甲状腺ホルモンの補充は不要だという考えに傾いた。しかし、2000~2010年、早産児の救命率の向上によって、より重度の低サイロキシン血症を呈する児が増えたことと、在胎週数が短い児ほど低サイロキシン血症の頻度・重症度が高く、かつこれらの児の発達予後が不良であることから、再びTHOPに対する甲状腺ホルモン補充が必要であるという考えが再燃してきた。しかしながら、これを支持するエビデンスはいまだ存在していない 12)。加えて、チラーヂン ® Sの投与が晩期循環不全を増すという報告がわが国で相次ぎ 13)、同薬剤の添付文書にも注意が喚起されるようになった。このような、臨床報告からの新たな病態の確立こそ、臨床医学に基づ副腎皮質ホルモンの合成障害胎児・早産児の甲状腺機能の特徴

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