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3 女性は子どもを産んだからといって、“母親”になるわけではありません。森に住んでいるオランウータンは集団での子育てを見て、自然に子育てを学習していきます。動物園に来たオランウータンはそうはいきません。子育てを放棄することすらあります。私たちは出産した女性が母親になるプロセスを一緒に歩み、進む道をわかりやすく示す教師でなければなりません。できれば出産前から小児科医には、これからどのようなことが待ち受けているのかをあらかじめ示す役割を担ってほしいものです。そこで信頼関係をつくっておくことは、出産後に大きなプラスになります。 「わが子が元気に育っているのかわからない」「どのように子どもと向き合っていけばよいのかわからない」といった育児不安を訴える母親も少なくありません。「赤ちゃんを抱っこするのは初めてです」という母親が、雑誌やウェブサイトなどから入ってくるさまざまな情報に振り回されてしまうと“子育てはつらいこと”と感じてしまうかもしれません。不安を抱えながら子育てをしていては、子育てを楽しむことなどできるわけがありません。母親が抱く不安・心配はある程度共通しています。児の月齢に応じて母親の不安も変わってきますので、あらかじめこれからの数カ月に感じることが多い不安とその対策について説明しておくとよいでしょう。きっと母親は「これがあのとき、○○さんが言っていたことだ……。では、教えてもらったようにやってみよう」と、不安のトンネルに入り込むことなく、迂回できることでしょう。不安や心配はできるだけ早く解消することが大切です。笑顔で子育てができれば、子どもの成長・発達にも良いでしょうし、結果として母親が、もう一人子どもが欲しいと思うかもしれません。 子育て中の母親の不安を解消できる立場にある医療関係者はたくさんいます。母親が出産した分娩施設のスタッフ、乳児健診を担当する小児科医、小児科で勤務している看護師さん、家庭を訪問する保健師さんや助産師さん、そして保健センターの方々です。みんなで母親の味方になって、子育てを支えていくことが“笑顔で楽しい子育て”につなげる力になります。この本を手に取ってくださった“みなさん”が母親の気持ちに共感して、悩みや不安を傾聴する。そして、解決策を提案することで、母親はわが子と前向きに向き合うことができるのです。もちろん、乳幼児をみていく上での基本は、乳児の成長と発達を評価し、介入すべきところがあれば適切に介入することにあります。ただ、それだけではなく、母親の生活環境や育児不安にも注意を払うことも大切です。上に子どもが2~3人いる場合と初めての子どもの場合とでは、おのずとできることは違ってきますし、母親の心構えも変わってきます。初めてのお子さんの場合は、これからどんなことが起こるのかわからない不安があり、上にお子さんがいる母親では、上の子どもとの向き合い方、上の子どもからの感染対策などが重要となります。おのずと提案する情報も変わってきますし、言葉序にかえて~乳児健診に関わるみなさんへ

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