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………9イントロダクション見える経験をします(図イ-11).それはおそらく,食道から先に行けない内容物,おそらく羊水ですが,それが逆流して気管内に流入している,つまり食道−気管支瘻を通って食道から気管へ流入しているか,あるいは誤飲をしているという所見がみられることがあります.そういう胎児については,食道−気管支瘻や誤飲の有無について注意して診察しておかなければならないということになります. 以上が胎児を観察する時期によって所見が異なってくるという解説です. 次はEXITという胎児に対する処置についての説明です.ある胎児,例えば頸部リンパ管腫で口腔内が占拠され,舌を口腔内にすぼめることができずに常に舌を外に出している胎児がいます(図イ-12).そういう胎児はそのまま出生すると呼吸ができない,あるいは挿管ができないということが考えられるわけです.そのような胎児には,帝王切開で頸部から上の頭の部分だけを娩出させ,胎児循環を保ったまま挿管する.つまり胎児期に挿管を済ませてから出生させるわけです.そうすると胎児から新生児への呼吸・循環の連結がうまくいくことによって生命予後をよくすることができると考えられます.このように胎児期を延長させる処置をEXITと呼んでいます. この症例は気管が狭小化しており,EXITを行うときに挿管が困難で,挿管まで約10分を要しました.もしEXITをせずにこの子が出生していたとしたら,やはり挿管には10分かそれ以上の時間を要したと思います.EXIT中は胎児心拍をモニターしますが,心拍異常は全く認められず,臍帯血のガス所見も正常でした.これらのことから,EXITをしなかった場合に比べて,EXITを行ったことはこの児の生命予後をより良いものにできたと考えています.ただしEXITには母体のリスクを伴います.例えば子宮収縮抑制薬を用いるので,弛緩出血を来しやすい,帝王切開創部からの出血量が多くなる,そういう危険性もありますので,事前にEXIT(ex-utero intrapartum treatment)(Chapter 1)3図イ-12 頸部リンパ管腫・立体表示

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