術前に既往歴,合併症に対して詳細な問診を行い,全身状態を十分に把握しておかなければならない.近年,薬剤手帳を持参している人も多く,服用薬を調査する上で有用である.特に,術前に血小板凝固抑制薬の服用の有無を聴取しておくことは非常に大切である.血小板凝固抑制薬は服用中止後,薬効が消失するまで日数を要するものもあり,手術を考慮した時点で聞いておかなければならない.手術の前日までには,手術同意書を患者ならびにご家族から得ておく.手術の説明をする際には,どういう病気でどんな手術を行うか,また,手術をしない場合には他の方法があるかどうか,そして,術後の回復予想,最後に合併症の話を行い,同意を得る.手術の前日に入院し,夕食後は絶食絶飲とする.手術当日朝はグリセリン浣腸を行う.しかし,子宮内膜症のために強固な癒着が想定され,消化管合併切除が必要な可能性が高いような症例では,ニフレックⓇなどの経口腸管洗浄剤によりコロンプレパレーションを行う.腹式単純子宮全摘術本術式は,癌研究会附属病院・荷見勝彦前部長よりご教示いただき,それをアレンジしたものである.1990年代後半,腹式単純子宮全摘術は,「『手術時間1時間以内,出血量100mL以下』で終了しないと悪性腫瘍のリンパ節郭清術を行えない」という暗黙のルールがあった.当時は,術者以外の第一・第二助手も手術の手順をある程度わかっており,目標通り終わることはそれほど難しいことではなかった.しかし,現在は第二助手に研修医や学生が入るため,まだ,手術の手順を十分に頭に入れられずに助手を行っている状態である.そのような助手に指示を与えて手術を進めるため,もう少し手術時間がかかっているのが現状である.a術前処置6
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