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 医師になって3年目に、神奈川県立こども医療センターの新生児科専門研修医として超低出生体重児を担当しました。重度の脳室内出血と大量の肺出血を来して生後53時間で亡くなられた赤ちゃんを、今でも鮮明に覚えています。自分が担当でなければ、赤ちゃんの命を救えたのではないかと自責の念を抱き、肺出血や脳室内出血を防げるようになりたいと思いました。新生児遷延性肺高血圧症や先天性心疾患の赤ちゃんの循環不全が死や後遺症に繋がることも実感しました。 NICUに入院してくる赤ちゃんたちの「命と脳をよりよく護る循環管理」ができる医師になりたいと志して、東京女子医科大学日本心臓血圧研究所にて小児循環器学の専門研修や動脈管の基礎研究を行いながら、NICU循環管理への応用を考え続けていました。 2000年に神奈川県立こども医療センター新生児科に復帰して、1,000g未満の超低出生体重児や新生児遷延性肺高血圧症の赤ちゃんたちのほぼ全員に心エコーのプローブを当てさせてもらいつつ、年間100名前後の先天性心疾患の赤ちゃんたちの診療もチーム医療の一員として一緒に考えてきました。今でも、「命と脳をよりよく護るNICU循環管理」を探している道の半ばにいます。 本書では、NICUにおける「心エコー検査にもとづく循環管理」について、自分が出会ってきた恩師の先輩方から受け継いできた助言、同世代の仲間と経験して気づいたことや取り組んできたこと、後輩世代の先生たちに日々伝えていること、基礎研究から考察していることや横浜市立大学で医学生に講義してきた循環制御の生理学や病態生理のことなどを書かせていただきました。NICUで働く時間には限りがあると思える世代になったからこそ、次世代に託したいと思えることをまとめました。 心エコー検査では、「知らないことは見えてこない、見ようとするから気づけることがある」と思います。検査者の知識や技術を高めてこそ、早期に診断緒 言ii………

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