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胎児循環から新生児循環へ 早産児や病的新生児は、胎児循環から新生児循環への移行において循環不全を容易に来します。新生児の循環生理の理解なくして、適切な循環管理は難しいです。この項では、新生児の循環の生理について概説します。■新生児循環への移行 循環は、血液に酸素を結び付ける肺循環と、酸素などを全身の組織に送る体循環の2つに大きく分けられます。肺は他の臓器に比して血流量が多い臓器であり、毛細血管密度が高く、拡散による呼吸ガスの交換に適しています。肺循環の主な役割は、酸素の取り込みと二酸化炭素の排泄です。一方、体循環の役割は、全身臓器にエネルギー源となる酸素や代謝基質(脂肪酸、ブドウ糖など)を届け、エネルギー産生の結果として生じた二酸化炭素や代謝産物を回収することです。 胎児では、酸素や代謝基質は胎盤で供給されるため、胎児循環において肺循環は重要ではありません。胎児循環では、胎児心臓が胎児の全身臓器に血液を拍出するとともに、ガス交換や栄養補給のために胎盤に向けて血液を拍出します。左室の血液は主に脳を含めた上半身に向けて拍出されるのに対して、右室の血液は主に動脈管を介して下半身と臍帯・胎盤に向けて拍出されます。心拍出量は右室:左室で6:4とされ、右室が左室より多く拍出しています1)。胎児循環とは右室と左室とが並列な循環であり、胎児の主心室は右室だと考えられます。 新生児の循環系の最も大きな特徴は、胎盤とつながっていた胎児循環から肺循環を必要とする新生児循環に移行することです。出生後は肺循環の確立に伴い、右室−肺−左室−全身という直列の循環に変わるため、右室の拍出量は減り、左室の拍出量が増えます。肺循環の確立や動脈管を介する左右短絡血流により、生後早期に左室の容量負荷(前負荷)が急速に増えます。加えて、血管抵抗の低い胎盤から分離されることにより体血管抵抗(後負荷)も増大します。胎児の主心室は左室でなく右室。出生後に胎盤と離れると、左室は前負荷・後負荷の増大に直面するので、心不全を来しやすいです。前負荷と後負荷については、ChapterⅢ-1で詳しく解説します。1新生児の循環生理2………

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