■新生児の循環不全 新生児の循環不全の原因には、「心原性」と「血管原性」があります。「心原性」は低酸素血症、低血糖、低カルシウム血症、アシドーシス、失血、出血、貧血、未熟児動脈管開存症(PDA)、先天性心疾患などが原因で、心ポンプ不全が起こっている病態です。「血管原性」は浮腫、敗血症、副腎不全などにより心臓へ還流する血流量が減少することで十分な心拍出や全身臓器への血流を維持できていない病態です。 呼吸障害や胎児・新生児仮死などで、出生に伴う肺循環の確立が妨げられ、出生後も肺血管抵抗が高い状況が続けば新生児遷延性肺高血圧症(PPHN)となり、右室の後負荷が高いため右心ポンプ不全を来します。さらに拡張能・収縮能に乏しい未成熟な心筋により、早産児・病的新生児の左室は出生に伴う前負荷と後負荷の増大に適応できず左心ポンプ不全を来し、適応障害と言える循環不全に陥ります2)。つまり、出生早期は人生の中でも循環不全を来しやすい時期です。早産児・病的新生児では、中心静脈圧や肺動脈楔入圧といった成人循環器学で有用とされる侵襲的な循環動態モニタリングは技術的に困難です。そこで、心エコー検査を活用して循環不全の診断や治療効果の評価を細やかに行っていくことで、救命ならびに合併症の予防を目指してきました2, 3)。 われわれは、超低出生体重児の生後早期は、①肺血流量増加に伴う前負荷増大により引き起こされる未熟児動脈管開存症、②胎盤分離や生後の血圧上昇に伴う後負荷増大に対する左心ポンプ不全などを心エコー検査で評価し、循環作動薬や鎮静薬の選択や調節を行うことで、肺出血や脳室内出血を減少できたと報告してきました。 心エコー検査を実施しても、知らないことには気付けません。正常を知らなければ、異常を見つけることはできません。まず、心エコー検査を行う前段階として、心血管系の基本的な構造について復習しましょう。心臓の構造(図1-1) 心臓は右房−三尖弁−右室から成る右心系と、左房−僧帽弁−左室から成る左心系とに分けられます。早産児や病的新生児は心不全を来しやすいです。心エコー検査に基づく循環管理で、合併症を防ぎながら救命を目指しましょう。Ⅰ新生児心エコーことはじめ1新生児の循環生理………3
元のページ ../index.html#9