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20胎児の発育と評価1 胎芽期から胎児期、そして出生に至るまでの形態的発育は、全妊娠期間を3つの期間に分けて考えられている(図1-1)1)。まず妊娠初期は受精卵の発生分化が起こり、受精後から4〜8週のいわゆる器官形成期を過ぎ、16週までは細胞数そのものが急速に増加する時期(発生分化期)である。その後の妊娠17〜32週までの妊娠中期は、細胞数の増加とともに細胞そのものが肥大し、形態的に発育する時期(発育期)である。妊娠33週以降から出生までの妊娠後期では細胞数はほとんど増加せず細胞が肥大し、各臓器が機能的に成熟していく時期(成熟期)である。特に妊娠中期から後期にかけての成長は著しい。 胎児発育を評価するためには、分娩予定日が正しく算定されていることが前提にある。したがって、胎児発育異常を疑った場合には、分娩予定日が正しく算出されているかどうかを確認する。通常、最終月経開始日から分娩予定日が決定(最終月経開始から14日目に排卵・受精したとして算出)されるが、基礎体温表により排卵日がわかる場合や、人工授精や体外受精により受精日が特定される場合には、それらから起算した分娩予定日を用いる。ただし、凍結融解胚移植などの採卵周期と胚移植周期が異なる体外受精の場合は、培養日数を考慮する必要がある。 正常子宮内妊娠であれば、遅くとも妊娠5週前半までには経腟超音波にて子宮内に胎嚢(gestational sac;GS)が確認できる。胎嚢が認められない場合は、流産や異所性妊娠、初期の正常妊娠(妊娠週数の誤り)との鑑別が必要となる。妊娠6週となると図1-2に示すように子宮腔内に胎嚢を認め、その中に卵黄嚢に接した胎芽を認め、心拍動も確認できるようになる。最終月経開始日からの分娩予定日と、超音波にて正確に測定された頭殿長(crown-rump length;CRL:図1-3)からの予定日(CRLが14〜41mmの時期)との間に7日以上のずれがある場合にはCRL値からの予定日を原則採用する1)。 実際、胎児発育を評価するには、超音波にて胎児の大横径(biparietal diameter;BPD)と腹部計測値(腹囲長、abdominal circumference;AC)と大腿骨長(femur length;FL)を計測することにより推定体重を算出し、胎児標準発育曲線と比較して評価する。推定誤差に関して、約70%の症例は10%以内の誤差、約90%の症例が15%以内といわれている2)。現在わが国においては、胎児発育評価の統一化を図るため、2003年の日本超音波医学会の公示3)ならびに2005年の日本産科婦人科学会周産期委員会の報告4)において、妊娠週数ごとの胎児体重の基準値として「超音波胎児計測の標準化と日本人の基準値」が示されており、出生体重ではなく胎児体重基準値(表1-1、図1-4)を使用することとされている1、5)。算出された胎児推定体重より−1.5SD値以下の場合に胎児発育不全(fetal growth restriction;FGR)と判定する1、5)。出生児の発育の基準値としては、2010年に日本小児科学会新生児委員会で提案された「日本人の在胎別出生時体格基

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