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14おいては外傷診療と異なり,患者が「複数」いるという点を重視し,通常のABCDEアプローチに加えてJATECTMの妊婦外傷の章で推奨されているF(fetal assessment)の概念1)を標準化したABCDEFアプローチというアルゴリズムを作成した.初期のA〜Eまでは母体の生理学的徴候の,Fは胎児の生理学的徴候の評価を行う手順として,母体救命を優先する考え方を導入している.専門的産科診療を開始するまでの数分間でこのPC3におけるPS(PC3-PS)をクリアすることで患者の生命が担保され,安全で安定した産科専門診療が実施できる.表2に外傷初期診療で用いられているABCDEFについて簡潔にまとめた. 産科的専門診療(胎児娩出や本格的な止血)にはこうした生理学的徴候の把握と全身状態の改善とがなされてから着手すべきであり,次のステップをPC3におけるSS(PC3-SS)と命名した.やはり外傷初期診療の流れを応用した概念である.救急の現場での日常診療を援用している表2 ABCDEFアプローチAAirway 気道評価 口腔内異物,血液・異物の誤嚥,口咽頭損傷,舌根沈下など気道閉塞の有無BBreathing 呼吸評価 呼吸様式,左右の呼吸音,胸郭の動き,胸部体表の創傷,中心性チアノーゼ,SpO2CCirculation 循環評価 蒼白,冷感,末梢チアノーゼ,出血の有無,心拍数,血圧,毛細血管再充満時間(CRT),エコーによる胸腔・腹腔内出血の検索(FAST),迅速な止血術DDysfunctionofCNS,Disability 中枢神経障害の評価 意識レベル,瞳孔径,瞳孔不同,対光反射EExposure&Environmentalcontrol 脱衣と体温管理 全身状態観察(開放創,活動性出血)のための脱衣,低体温防止のための体温測定と保温FFetalassessment&Forwardtransfer 胎児の生理学的評価と専門施設・高次施設への転院 胎児心音の評価,新生児蘇生が必要な場合の準備(文献1を参考に作成)表3 AMPLEAAllergy アレルギー アレルギーはあるか?MMedication 服薬 現在服薬している薬剤や喫煙歴はあるか?PPasthistory&Pregnancy 既往歴・妊娠 既往の疾患や手術(開腹歴や帝王切開など),既妊歴や妊娠週数・胎児数や胎位は?LLastmeal 最終摂食 最終摂食時間や内容は?EEvents&Environment 機転や状況 いつ,どこで,どんなもので,どのように(発症時間や場所,分娩状況など)?(文献1を参考に作成)

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