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8PC3誕生のバックグラウンド 重症妊産婦の初期対応は難しい,とよく言われる.重篤な症例が発生した際の初期対応を不得意だと感じている医療従事者は少なくない.実際に心肺停止などを来した妊産婦にどのように対応すべきか,ほかの医療従事者とどのように連携をとるかという明確なガイドラインはこれまで示されてこなかった.こうした背景の中で不幸な転帰をとった症例もまた少なくない. 特に重症周産期救急では2つの命が危険にさらされているが,この状況に対し適切な初期診療が実施されれば,同時に2つの命を救うことも不可能ではない.しかし,適切に実践されなければ,その2つの命は医療従事者の目の前で失われてしまうことになる. このような,妊産婦に起こる突然の心停止や急変に対して確実な初期診療や心肺蘇生を実施することにより,一人でも多くの妊産婦を救命しようという動きがある.米国の家庭医が難度の高い分娩をも取り扱えるようになるために開発されたセミナーであるAdvanced Life Support in Obstetrics(ALSO)では妊産婦の初期診療のなかにBLSを取り入れており,わが国の産科医療従事者からも非常に好評を得ている.さらに日本母体救命システム普及協議会(J-CIMELS)が,妊産婦の急変に対応する一次施設向けベーシックコースとして妊産婦に特化したBLS「京都プロトコール」の講習を行っている. 妊産婦の心停止に直面するのは産婦人科医が多いと思われるが,中にはBLSさえ受講したことがない中堅以上の医師もおり,不安を感じながら分娩を取り扱っているのが現状である.心停止に陥った妊産婦の救命は,直面した産婦人科医の対応如何でその成否が左右される.そのような場面に置かれた産婦人科医が適切な初期対応を実践することができ,必要な救急処置は何か,どのようにすればいいのかを理解しておくことが重要である. そのため,われわれは重症の妊産婦を一人でも多く(二人とも)救命できるよう願って,一次施設から受け入れ側の高次施設まで適用可能な周産期の初期診療を学ぶことのできるコースを開発した.本書はこのPerinatal Critical Care Course(PC3:ピーシーキューブ)と名付けられたコースのガイドブックとして編まれたもので,自施設で周産期救急を受け入れる可能性のある産婦人科・麻酔科・救急科・新生児科の医師・助産師・看護師・技師,あるいは一次施設やプレホスピタルで働くすべての人々にとって必要かつ充分な知識をわかりやすく記載しているつもりである.コースのためのコースとしないために 本書の読者やPC3の受講生の大きなニーズの一つは「臨床に還元できる知識,技術を得る」ということである.シナリオを華麗にこなす能力を身につけることを目的とするのではなく,危機PC3とは

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