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10子宮頸癌・体癌センチネルリンパ節生検入門講座SLNの概念について理解しましょう センチネルリンパ節(SLN)とは何か? まずそれから、もう一度基本に立ち返って考えてみましょう。 現在、癌全般の根治手術で行われるリンパ節の系統的郭清では、数十個の所属リンパ節がリンパ管とともに摘出されます。これまでの癌治療では、微小な転移の種がどのリンパ節にあるかを診断するのが困難なため、癌の周囲に存在する各臓器の所属リンパ節をすべて摘出することで、どこかに存在するかもしれない転移の可能性を排除してきました。しかし、これは効率的な方法とは言えません。というより、非効率的なこと、極まりないですよね。そしてまた、数十個のリンパ節が摘出できたとしても、それぞれのせいぜい一断面しか顕微鏡検査を受けられず(一般的な病理診断では、リンパ節1個につき、一断面での標本作成が普通です)、断面から外れた小さな転移は見逃されてきたわけです。 そこで、たくさんあるリンパ節の中から、特に転移の可能性が高いリンパ節を選別して、これを細かな複数の断面の病理検査で徹底的に調べられないかという考え方が生まれました。SLNとは、腫瘍原発巣からはじめに直接流れを受けるリンパ節であり、最初にリンパ節転移が発生する場所だと考えられています。この考え方をセンチネルリンパ節理論(SLN理論)と呼びます。さらに言えば、SLNに転移がなければ、その他のリンパ節にも転移はないと判断することができます。センチネルナビゲーション手術(SNNS)とは、このSLN理論に基づいて、SLNだけを同定して摘出、検討し、転移の有無によって個別に郭清の縮小や省略を行う手術です。SNNSは最初に悪性黒色腫に適応され、1993年、Kragらにより、はじめて乳癌に導入されました。 よく誤解されますが、SLNは距離的に一番近いリンパ節というわけではありません。臓器ごとに、この場所に見つかりやすいという傾向はありますが、症例ごとに違いますし、複数個存在することもあります。 では、どのようにしてSLNを発見するのでしょうか? 転移が成立するときに、リンパ管内に侵入した癌細胞が流れていく様子を再現すればよいということです。つまり、トレーサーという物質を腫瘍周囲に注入します。組織に注入されたトレーサーは、リンパ管に流入し、リンパ管に侵襲した癌細胞と同じようにリンパ流を伝って流れて

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