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出版に添えて リンパ浮腫やリンパ囊腫感染に苦しむ子宮頸癌・体癌患者さんの発生を、少しでも減らしたい。そう思う産婦人科医療関係者に、センチネルリンパ節(sentinel lymph node;SLN)の概念を用いたセンチネルナビゲーション手術(sentinel node navigation surgery;SNNS)への取り組みを容易にスタートしていただくための情報を提供する。これがこの本の目的です。 少し進行しつつあると思われる子宮頸癌や子宮体癌の患者さんの治療計画をたてるとき、リンパ節郭清を施行するのかしないのか、施行するとしても徹底的に行ってよいものかどうか判断に迷うことがありませんか? 手術となり、郭清すればするほど、治しているという満足感と、合併症が多くなってしまうという心配(罪悪感?)が交錯して、複雑な気持ちになった経験はないでしょうか。 誰が見てもかなり病状が進行していると思われる場合は、ある程度の合併症はやむなし、というような気持ちで郭清・手術ができると思います。しかし、例えば子宮頸癌で、わずかに浸潤が深くなっている(ⅠA2期や、それに近いⅠB1期など)という場合には、実際のリンパ節転移率は1割前後でしょうから、9割近くの患者さんは転移のないリンパ節の広範囲にわたる郭清を受けることになってしまいますね。 特に患者さんが若年層であれば、郭清によって今後長きにわたって起こる可能性のあるリンパ浮腫やリンパ囊腫などの合併症を考えると、転移の確率の高い、問題となるリンパ節のみを見つけ出して、効率よく摘出できないかという思いが強まります。 これを解決してくれるのがSNNSです。乳癌ではすでに2000年代前半から用いられ、現在は治療ガイドラインとして認められています。いまだわれわれも試行錯誤の中ですが、すでに子宮頸癌では、SLNが発見できて術中に転移が見つからなければ、ほかのリンパ節の郭清は省略するところまでたどり着きました。 リンパ浮腫やリンパ囊腫の炎症で苦しむ患者さんを一人でも減らすために、また転移リンパ節を確実に見つけ出して摘出し、正確な診断と治療につなげるために、このSLN生検がどういうものか、いかにすればスムーズにうまく導入できるものか、今後の問題点は何かを、この本の中ではやさしく解説するよう努力しています。 皆さまの婦人科癌に対するSNNS導入の一助となり、患者さんの合併症軽減につながれば、私たちにとってこの上ない幸せです。2016年3月                                   田附興風会医学研究所北野病院産婦人科 宮田明未  辻なつき  永野忠義

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