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8子宮頸癌・体癌センチネルリンパ節生検入門講座はじめに 私たち産婦人科医が婦人科癌の治療を行う際に、リンパ節の取り扱いについて考慮しないことはないといってよいほど、リンパ節は治療上の大事なポイントの一つです。リンパ節転移は、癌の予後に大きな影響を与えるからです。しかし、癌が極めて進行してしまっている場合には、リンパ節の問題以前に、原発巣の局所制御をいかに行うかということが大事な場合があるでしょうし、症例によっては腹膜への進展の制御や、肺・肝臓などへの遠隔転移の制御が主たる問題となることがあります。 それでも進行癌においては、どのようなケースにおいても、ある程度リンパ節を治療前に評価しておくことが基本であることは間違いないと思います。画像診断の進化した現在では、超音波検査、CT、MRI、PETにより腫大リンパ節の有無を検討することが比較的容易となってきました。もしも治療前に、画像上で診断できるほど腫大した転移リンパ節を発見すれば、それをどの時点でどのように制御するか、あるいはどの程度まで制御できるのかを考えなければならず、そしてそれとともに、原発巣をどの程度治療するかを決定していかねばなりません。ただし、リンパ節転移の疑いがあると画像上で診断されても、その診断はあくまでリンパ節のサイズと形態からしか判断されていないため、炎症性の腫大との鑑別は困難です。 画像による形態学的な診断に加え、機能的な診断能力を兼ね備えたPET/CTでも、5mm以下の腫瘍については診断が困難だとされています。リンパ節が腫大していないリンパ節転移の発見は、現在でも極めて困難だと言わざるを得ません。そのため、子宮頸癌・体癌の原発腫瘍径の小さな浸潤癌の低リスク群で、リンパ節転移頻度が低いと予想される場合でも、微小なリンパ節転移を見つけるために、広範囲で完全なリンパ節郭清が従来から行われ、これによって生じる患者さんの合併症は決して小さなものではありません。 このような系統的リンパ節郭清に一石を投じつつあるのが、センチネルリンパ節(sentinel lymph node;SLN)の検索です。 近年、若年の子宮頸癌・体癌患者の増加が見られ、頸癌では子宮温存を必要とする(希望する)場合に大きな円錐切除や広汎性子宮頸部摘出術(トラケレクトミー)を行い、リンパ節の評価も同時に行うことを求められることが稀ではなくなってきました。そのようなときに、現在の術前の画像診断を超えるような方法でリンパ節が詳細

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