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9子宮頸癌・体癌センチネルリンパ節生検入門講座はじめにに評価できれば、安心して機能温存手術を選択できるわけです。 当科の医師たちも、このような機能温存手術を行う際に、さらに高精度でリンパ節転移のない(ある)ことを診断でき、また合併症の少ないリンパ節郭清(評価)ができないかと考え、東北大学産婦人科の八重樫伸生先生、新倉仁先生にSLNについて教えを請いました。そして2009年から当院倫理委員会の承認の下、子宮頸癌に対してこのセンチネルリンパ節生検(sentinel lymph node biopsy:SNB)を、SLNのみでなく全てのリンパ節郭清を行いながらデータを積み重ねて検討することでスタートしました。トレーサーにはラジオアイソトープ(RI)と色素を使用してきました。 順調にSLN生検症例を50例経験したところで結果をまとめ、2012年からは、次のステップとして、SLNが見つかり、そこに術中迅速組織診断で転移がなければ、他のリンパ節は郭清しないことを方針に継続中です。すでに、SLNのみでバックアップ郭清を行わずに終えた症例が蓄積されています。まだ観察期間は短いのですが、骨盤内リンパ節への再発症例は認めていません。しかも、リンパ節郭清に伴う合併症の軽減も確認できるようになってきました。これが最終的な目的といってもよいものですから、その意義は大きいです。 さらに2010年からは、子宮体癌に対してもSLN検索をスタートしました。しかしこの体癌では、今のところは残念ながらSLNの検出率が低く、トレーサーの投与方法や投与量、投与部位などにいまだ問題があると思われ、細かい変更、工夫を続けているところです。 乳癌ではすでに、日本乳癌学会の「乳癌診療ガイドライン」で、「臨床的腋窩リンパ節転移陰性乳癌において、手技に習熟したチームが行ったSLN生検で転移陰性と診断された場合には、腋窩リンパ節郭清の省略は、安全かつ有効な治療法で、強く勧められる」と述べられており、推奨グレードは「A」となっています。そしてさらに、「センチネルリンパ節生検は腋窩リンパ節郭清と比較して、術後の合併症および上肢機能障害が少なく、有意にQOLを改善させることより、施行することが強く勧められる」とも記されており、これも推奨グレード「A」です。 私たち産婦人科の世界でも、早くこのセンチネルナビゲーション手術(sentinel node navigation surgery;SNNS)を患者さんのQOL向上のために普及させていきたいものです。ただし、乳癌は体表面に近く、SLNは左右片方での評価でよいという面があります。これに対して、骨盤内臓器で身体の正中にある子宮は、身体の深いところで両側のリンパ節評価が必要であるという難しさがあるのです。 ぜひこの本をきっかけとして、この難しさを皆さんと共に乗り越えていければと思っています。

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