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序文 この本は、2007年6月号から2017年5月号まで120回、10年間にわたって『ペリネイタルケア』誌上に連載「画像でみる産科学」と題して掲載した内容を整理し、新たな編集を加えたものです。この10年は長崎大学産婦人科教授として在任した期間と重なっており、私にとっては教室員との楽しい共同作業になりました。いずれも長崎大学産婦人科の症例であり、自分たちの経験を元に記載しました。私たちは毎週、入院した全ての例を対象にカンファランスを行います。症例によっては、他科の先生にも加わっていただき、そこでの議論をもとに担当者が論文を執筆しました。この本の作成に関わった医師は総勢72名にのぼります。取り上げた症例を見てみると、産科医療がいかに広範囲な疾患を扱う診療科であるか、すなわち婦人科や他科との連携がいかに重要であるか、産科はまさにチーム医療である、ということを再認識させられました。産科医療に限らず、20世紀の医療革命は画像診断によって起こった、とさえいえるように思います。特に超音波検査が子宮という密室に窓を開いたことは、医療者のみならず母親やその家族にとっても目覚ましい経験でした。「見る」という行為がいかに人にとって重要なことであるか、それを私たち産科診療に関わる者は実体験したのだと思います。CTやMRIなどの画像診断法が急速に発達したことも大きかったと思います。 そして21世紀の医学・医療は遺伝子の時代として記憶されるでしょう。その始まりは、PCRによるDNA増幅法の登場であり、これによって遺伝子もまた「目に見えるもの」になりつつあります。果たしてヒトの遺伝情報はどのように管理されるのでしょうか。遺伝子万能の考えは、ヒトの能力や個性や生
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