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8脳腫瘍合併妊娠■■疫 学 脳腫瘍合併妊娠の頻度は10,000人に1例で、それによる母体死亡は、全母体死亡の約8%を占めるといわれています。組織型は神経鞘腫と髄膜腫が3分の1ずつで、次に聴神経腫瘍が多く見られます1)。 一般的に脳腫瘍は妊娠中に増大しやすく、産後に縮小する傾向にありますが、妊娠中に増大する理由は、妊娠により循環血液量が増大し、水貯留と血流増加が浮腫を増悪させ、血管に富む腫瘍自体が拡大するため、あるいは腫瘍自体に存在するホルモンレセプターが刺激されるためだと考えられています2)。■■診 断 症状は脳腫瘍の種類や大きさによりさまざまですが、一般的な症状は慢性頭蓋内圧亢進症状と巣症状(局所症状)とに大別されます。初発症状として頭痛、悪心、嘔吐などが見られますが、これらは通常の妊娠中であっても認められる症状であるため、神経学的診察による鑑別が必要です。また、てんかん発作は脳腫瘍患者の30〜40%に認められますが、妊娠後期の発症例では子癇発作と誤って診断されることも多く、注意が必要です。妊娠中に脳腫瘍を疑った場合、頭部CT、MRI、単純X線、血管造影検査などにより診断されますが、CTあるいは血管造影検査で使用するヨード剤、MRI検査で使用するガドリニウム含有の造影剤は、胎盤通過性があるものの、ごく少量であるため胎児毒性は少ないとされています3)。脳腫瘍合併妊娠図1■頭部3D画像検査所見症例1のCTから3D画像を再構築したもので、今回の腫瘍(A)と手術後の残存腫瘍(B)が描出されています。01ABA
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