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91合併症妊娠 01●脳腫瘍合併妊娠■■妊娠・分娩の管理 妊娠中に脳腫瘍を認めた場合は、母体と胎児の状態を総合的に判断し、治療方針を決めなければなりません。放射線療法は腹部を遮蔽することにより妊娠中でも高線量の照射が可能であり、胎児への被曝は確定的しきい線量である0.1Gy以下といわれています4)。腫瘍摘出術は、児の胎外生活が可能になる時期まで妊娠を継続し、分娩後に実施することが望ましいのですが、脳圧亢進、および神経学的障害が増悪してきた場合には、手術療法を考慮する必要があります。 分娩様式については、陣痛・腹圧による脳圧亢進を避けるため、全身麻酔下の選択的帝王切開術が推奨されています5)。症例1 25歳の初産婦で、身長158cm、体重47kgです。既往歴として21歳で左小脳橋角部腫瘍(組織診断:神経鞘腫)の部分摘出術を受けています。22歳で同部位の腫瘍が増大したためサイバーナイフ治療を行っています。その後は腫瘍の増大を認めていません。 近医で妊娠と診断され、上記既往があったため、妊娠9週で当科へ紹介されました。左顔面神経麻痺が軽度にあり、会話が困難な状態でしたが、妊娠中に症状の増悪は認めませんでした。妊娠36週のMRI検査で左小脳から内耳道にかけて腫瘍が認められ、右側の残存腫瘍により脳幹・第4脳室は圧排されていましたが、水頭症や神経脱落症状などは認めませんでした(図1,2)。陣痛・腹圧による脳圧亢進・脳神経学的症状の増悪の可能性を考え、妊娠38週4日で全身麻酔下に選択的帝王切開術を行い、2,860gの女児をApgarスコア1分値9点/5分値9点で娩出しました。術後は症状の増悪はなく経過良好であったため、産褥8日目に母児共に退院しました。退院後は定期的に経過を見ていますが、症状の増悪はなく、腫瘍の増大も認めていません。症例2 30歳の1経妊1経産婦で、身長152cm、体重58kgです。既往歴は特にありません。妊娠初期より近医の産婦人科で妊娠管理されており、妊娠31週0日に突然、左半身の感覚障害が出現し、頭部MRIで脳腫瘍が疑われ、同日、当院の脳神経外科へ入院しました。画像では右RL図2■頭部造影MRI■T1強調画像検査所見左小脳橋角部から内耳道入口部にかけて腫瘍を認めます()。この腫瘍により脳幹は右方に圧排されています。右小脳橋角部には硬膜と接して残存腫瘍が認められます()。

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