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2生殖外科が妊孕性改善に果たす役割生殖外科は、不妊治療のみならず、妊孕性温存のための幅広い外科治療の総称である。よって、現在および将来の不妊原因や妊孕性の妨げになる疾患の改善ならびに除去がその応用範囲となる。不妊原因の種類や頻度に関しては多くの報告があるが、2003年に日本受精着床学会が行った不妊治療患者におけるアンケート調査では、卵巣因子が20.5%、卵管因子が20.4%、子宮因子が17.6%、免疫因子が5.2%、男性因子が32.7%となっており、男性因子を除く約7割には女性側の不妊原因が存在することになる。これら不妊原因の中で生殖外科の適応になるものとして、卵管病変、子宮腔内病変、子宮筋腫、子宮内膜症、先天性子宮形態異常などがある。卵管障害では、卵管形成術(癒着剝離術、卵管采形成術、卵管開口術)を行うことで多くが妊孕性を回復することができる。子宮腔内病変では、子宮粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮腔癒着症、先天性子宮形態異常などの不妊症への関与が指摘されており、これらに対する外科的治療で妊孕性の改善が期待できる。子宮筋腫では、子宮筋腫核出術の不妊治療に関する意義は現状では確立していないが、子宮筋腫のみの原因不明不妊症例に対して子宮筋腫核出術が有用である可能性がある。子宮内膜症は、生殖年齢女性の約10%に認められ、月経痛、慢性骨盤痛などの疼痛症状を主症状とする疾患であり、さらに、30~50%が不妊を合併し、また、不妊女性の20~50%に子宮内膜症が認められることから、妊孕性を低下させる疾患であり、病巣の除去による妊孕性改善が期待できる。先天性子宮形態異常では中隔子宮が主な手術対象となり、他に原因のない不妊や反復流産患者に中隔切除が考慮される。これらの疾患に対する妊孕性温存のための手術適応は、現在拡大の一途をたどっており、内視鏡下手術を中心とした生殖外科学の発展に負うことが大きい。現在では、婦人科領域における内視鏡下手術は、ほとんどすべての良性疾患の治療に用いられている。内視鏡下手術の普及に伴い生殖外科領域においてもその低侵襲化が求められており、低侵襲手術としての内視鏡下手術は、生殖外科においても中心的役割を果たしている。 1生殖外科とは

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