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I性周期とその調節機能〜妊娠の成立と維持01総論生殖と妊娠初期13 性周期とその調節機能、妊娠の成立と維持を理解するに当たり、卵子の形成や排卵を含む個々のイベントに関しての発生学的知識が必要といえる。さらに、性ホルモンの生理学的調節機構への理解も必要であり、それぞれを解説する2)。1)卵胞数の経年的変化 ヒト卵巣内の卵子は、原始卵胞という形で卵巣皮質に貯蔵され、胎生4カ月目に最も多く、その大多数は週数を経るにつれてアポトーシスによって減少する。その結果、出生時には約100万個の原始卵胞が残存しているが、出生後はアポトーシスの速度は減少するものの、初経時には30万個程度にまで減少する。一方で、妊娠率の低下はおよそ30歳より始まり、妊孕性が消失した後、月経不順という移行期間を経て平均51歳ごろに原始卵胞が1,000個以下になり閉経に至る3)。2)卵の成熟 精子と異なり、卵の成熟は胎児期より開始されており、第一減数分裂前期の状態で性成熟期性周期の理解に必要な卵巣の生理学まで停止している(一次卵母細胞)。その後、LH(luteinizing hormone:黄体形成ホルモン)サージによって第一減数分裂が再開し、第一極体を放出して成熟する(二次卵母細胞)。従って、LHサージは排卵のみならず、卵の成熟の最終段階を調節する重要な因子といえる。なお、二次卵母細胞ではすぐに第二減数分裂が開始されており、第二減数分裂中期(metaphaseⅡ)に達した後に再び停止し、その状態で排卵されて受精を待つ(図2)2)。 女性は男性と異なり、明確な性周期を持つという特徴がある。前述のごとく、性周期は視床下部−下垂体−卵巣−子宮の連動によって巧妙に調節されており、その調節には性周期の各段階で作用するフィードバック機構が深く関わっている。1)卵胞期 卵胞期は、未熟卵胞が成熟卵胞へと発育する期間を指す。ヒトにおいては複数の卵胞が同時に卵胞発育を開始するが(リクルートメント)、大多数が萎縮し(セレクション)、最終的にはフィードバック機構によるホルモン調節 性周期とは、視床下部−下垂体−卵巣−子宮の連動によって起こるサイクルであり、排卵や月経はその過程において発生するイベントである。まず視床下部からゴナドトロピン放出ホルモンが分泌され、下垂体から2種類のゴナドトロピンの分泌が促進される。卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)がそれらに当たり、それぞれ卵胞発育や排卵誘発という重要な働きを持つ。また、卵胞からはエストロゲン、排卵後の黄体からプロゲステロンが分泌される。非妊時には黄体が約2週間で退縮し、それらの分泌低下によって消退性出血(月経)を誘起する。一方、妊娠時には絨毛から分泌されるヒト絨毛性ゴナドトロピンの作用で黄体が刺激され、プロゲステロンの分泌が持続する結果、月経が誘起されずに妊娠が継続される。Summary

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