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左合治彦 さごう はるひこ ● 国立成育医療研究センター 副院長/周産期・母性診療センター長胎児疾患の概要1414査のことで、超音波検査、MRI検査、CT検査がある。超音波検査が胎児診断の主体であるが、胎児の中枢神経疾患、胸部疾患、腹部疾患、腫瘍性疾患などでは、MRI検査を併用して精査検査が行われる。また、骨系統疾患ではCT検査が用いられる。遺伝学的検査には、羊水検査と絨毛検査とがある。胎児成分の一部である羊水細胞や絨毛組織を用いて、染色体検査、遺伝子検査を行う。これらは確定的検査といわれるが、非確定的検査(スクリーニング検査)として、染色体疾患(21トリソミー、18トリソミー)の罹患リスクを判定する母体血清マーカー検査やNT(nuchal translucency)検査、また母体血中のcell-free DNAを用いたNIPT(noninvasive prenatal genetic testing:無侵襲的出生前遺伝学的検査)2)がある。 胎児疾患の診断の契機は、通常の妊婦健診で異常所見が認められることによることが多い。FGR(fetal growth restriction:胎児発育不全)や羊水量の異常(羊水過少、羊水過多)から精査され見出されることが少なくない。また、妊娠20週、30週で胎児超音波スクリーニング検査3)を行う施設も多くなり、スクリーニング検査で異常所見が認められ、精査して見いだされることも多くなってきた。胎児疾患の種類 胎児疾患の分類に関して一定のコンセンサスはじめに 妊娠・出産によって人が次世代へと継続されるのであり、妊娠・出産は原始の時代から人にとって大きな、そして大事な出来事であった。その妊娠・出産において子宮内の胎児は長い間神秘に包まれた存在であった。解剖などによって亡くなった胎児の情報の一部が得られることはあったが、子宮内の生きた胎児についていろいろな情報が得られるようになったのは、つい最近といえる。1970年代に胎児鏡により子宮内を観察する試みがなされ、1980年代には超音波診断技術の発達により、胎児の形態が視覚化されるようになった。また1960年代後半に羊水細胞から胎児の染色体検査を行うことが可能となった。これらの診断技術の発達により、子宮内の胎児の異常の有無が判別できるようになり、胎児疾患という概念が形成された。 胎児疾患とは胎児期に見出される疾患の総称である。胎児疾患は超音波検査などの画像診断で見いだされる疾患、すなわち各臓器の形態異常や胎児貧血、胎児水腫などの各種病態と、羊水検査などの染色体検査で見いだされる染色体疾患とに大別される。胎児疾患の診断 胎児診断技術は、形態学的検査と遺伝学的検査とに大別される1)。形態学的検査とは画像検

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