402350600
17/20

総 論PartⅠ胎児疾患の概要1515科、泌尿器科、耳鼻科、形成外科、麻酔科など関連各科と十分に検討することが不可欠となる。選択する治療法によっては管理できる施設も限定される。例えば、新生児の心臓手術や脳外科の手術ができる施設は限られている。基本的には、生後の治療方針に合わせて妊娠中の管理を行うこととなり、分娩時期や分娩方法も決まる。 胎児の状態とその後の予測される経過や出生後の治療方針について、妊婦とその家族に出生前から十分説明する。出生後の状態や治療方針の詳細に関しては、生後担当することになる専門科の医師からも説明するのがよいと思われる。また、妊婦とその家族を支援するために、看護師や助産師、場合によっては認定遺伝カウンセラーの役割も大きい。 妊娠中は胎児を経時的に観察して状態を評価し、その情報を関連各科の医師と定期的に共有する。胎児の状態を加味しながら生後の治療方針を実行できる準備を整え、分娩時期と分娩方法を決めることとなる。しかし、生後の治療が期待できない症例においては、胎児期に何らかの介入をして胎児の状態を良くしたいという考えから胎児治療が考慮される。胎児治療は胎児疾患の管理法の一つであるが、まだ胎児治療の対象となる疾患は限られている。 また、非常に重篤な疾患や状態で、生後の治療や胎児治療に期待できない症例もある。これらの胎児疾患に関しては、今後、胎児緩和医療5)を積極的に取り入れていく必要があると思われる。胎児緩和医療は日本ではまだなじみが少ないが、胎児を人と認め、その人権を尊重するため、不必要な治療や管理から胎児を守るためにはぜひ必要である。しかし、必要な治療や管理はないが、主に臓器別に分類されることが多い。Diagnosis and Management of the fetal Patientと副題のついた『Fetology』4)の分類は参考になる。超音波検査で診断される疾患としては、主に臓器別に、中枢神経疾患、頭蓋顔面疾患、頸部疾患、胸部疾患、心血管疾患、腹壁疾患、胃腸疾患、泌尿生殖器疾患、骨系統疾患、四肢疾患、臍帯疾患、腫瘍性疾患、多胎疾患、胎児発育疾患、羊水異常、胎児水腫がある。遺伝学的検査で診断されるものについては、胎児染色体疾患に分類している。 妊娠中の管理と予後の観点からは、以下の①〜⑤のように分類される。①子宮内で死亡する可能性の高い疾患、②生直後に死亡する可能性の高い疾患、③生直後に治療を要し、重度の後遺症を遺す可能性の高い疾患、④生直後に治療を要するが適切に管理できる疾患、⑤生直後には治療をあまり要さない疾患。これらを適切に見分けることは非常に重要である。また、同じ疾患であっても、疾患の重症度によって予後は異なる。例えば、先天性横隔膜ヘルニアは肝臓胸腔内挙上型(liver up)であれば②③と予測されるが、肝臓腹腔内型(liver down)であれば④と予測される。胎児疾患の管理 胎児疾患を管理するためには、まず正確な診断が求められる。画像検査と遺伝学的検査を用いて疾患を診断し、主に超音波検査などの画像診断を経時的に用いて病態と重症度をできるだけ正確に推定する。それらの情報から予測される自然歴と生後の状態から、その後のとり得る治療方針を選択する。従って、新生児科のみならず、疾患によって小児外科、循環器科、脳外

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る