16161) 左合治彦. 出生前診断の方法とその変遷. 日本医師会雑誌. 143(6), 2014, 1141-4.2) Sago, H. et al. Nationwide demonstration project of next-generation sequencing of cell-free DNA in maternal plasma in Japan:one-year experience. Prenat. Diagn. 35(4), 2015, 331-6.3) 左合治彦ほか. 胎児の超音波診断.超音波医学. 34(4), 2007, 427-37.4) Bianchi, DW. et al. eds. Fetology:Diagnosis and management of the fetal patient. 2nd ed. New York, McGraw Hill Medical, 2010, 1004p.5) 船戸正久ほか. 胎児治療と倫理問題:胎児の人権と尊厳をどのように守るか. 産婦人科治療. 100(1), 2010, 47-52.6) Takahashi, YO. et al. Nationwide survey of fetal myelomeningocele in Japan:Backgrounds for fetal surgery. Pediatr. Int. 61(7), 2019, 715-9.7) Adzick, NS. et al. A randomized trial of prenatal versus postnatal repair of myelomeningocele. N. Engl. J. Med. 364(11), 2011, 993-1004. 引用・参考文献がなされないことがないように細心の注意が必要である。そのためには、正確な診断と他科や医師以外のメディカルスタッフなど、多職種の関与が不可欠である。胎児疾患の早期診断の課題 超音波診断装置や遺伝学的検査などの胎児診断技術の進歩によって、胎児の疾患がより多く、またより早い時期に分かるようになってきた。これは、胎児疾患を管理する観点からは良いことのはずであるが、実際には必ずしもそうとは限らなくなっている。妊娠22週未満の早期に胎児疾患が診断されることにより、妊娠中断される例がある。これは染色体疾患に限らず、生後に治療可能である小児外科疾患においてもみられる現実がある。 例えば、胎児の脊髄髄膜瘤についてわれわれの調査の結果6)から述べると、日本における診断週数の中央値は妊娠26週で、半数超が妊娠26週以降に診断されている。妊娠22週未満に診断されるのは全体の約1/5であるが、そのうちの3/4が妊娠中断されている。脊髄髄膜瘤は致死性疾患ではなく、生後手術によって治療可能な疾患である。しかし、現状では早期に診断されると大半の症例が妊娠中断されている。もちろん生後の手術治療によっても膀胱機能障害や下肢の運動障害などの後遺症は残る。そこで、胎児期に脊髄髄膜瘤の修復をして神経障害を軽減し、児の後遺症を減らす胎児手術が考案された。欧米では、胎児脊髄髄膜瘤の胎児手術の臨床試験で良好な治療成績が得られた7)後、盛んに胎児手術が行われるようになった。日本においても胎児手術を導入する準備は整ったが、胎児手術の適応は妊娠26週未満であり、日本においてはより早期に診断する体制が望まれる。しかし、より早期に診断される例が増えると、より妊娠中断となる例が増える可能性があるというジレンマに直面する。 妊娠中断される背景には、胎児疾患について、妊婦や家族が妊娠中断をとどまるに十分なだけの情報が提供されていないことがある。胎児治療によってより良い予後が期待できるようになれば、妊娠中断をとどまる例が増えると思われる。胎児治療と胎児診断は、胎児疾患を支える両輪である。脊髄髄膜瘤の胎児手術など、新しい胎児治療を日本に導入する意義は大きいと考えている。
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