10 脈管形成(vasculogenesis)と血管新生(an-giogenesis)を考える場合,胎生期のそれと成体におけるそれとを別々に考慮する必要がある.両者は共通点も多いが異なる点も存在する.中枢神経系に限らず胎生期の血管発生のメカニズムは,卵黄囊で形成され血管内皮増殖因子2型vascular endothelial growth factor(VEGF)受容体(VEGFR2=Flk-1)を持つ中胚葉由来の細胞が,VEGFの作用でblood islandの細胞(血球血管芽細胞〔hemangioblast〕)に分化し,さらに血管芽細胞(angioblast)を経るか,または直接,血管内皮細胞に分化し,さらにvasculo-genesis(脈管形成,de novo vasculogenesis)という過程で原始血管網(primary capillary plexus)が形成され,さらにangiogenesisという過程で毛細血管と動脈・静脈が形成されていくことにある(Fig.1.1-1)〔Risau 1997〕.an-gioblastはVEGFの2型受容体を発現している. vasculogenesisは発生初期の胚で起こることを指し,angiogenesisは発生初期のみならず成体でも起こる過程であるとされたが,成体においてもadult vasculogenesisが血管内皮前駆細胞 (endothelial progenitor cell:EPC)から起こることが報告された〔Asahara 1997〕.angiogen-esisには,sprouting(発芽)/budding angiogen-esisとnon-sprouting angiogenesis(intussuscep-tion,嵌入)があり,前者はangioblastのない脳でおもに起こり,後者は肺などで起こる.こうしてでき上がった血管はremodelingとmatura-tionという過程を経て,実際の脳血管になっていく.内皮細胞の生存・増殖・分化のどの過程にもVEGFが必要とされる.動静脈への分化も始まり,内皮細胞が壁細胞(平滑筋細胞smooth muscle cell:SMCと周皮細胞)に裏打1.1血管の発生development of the vesselsA:blood islandB:vasculogenesisC:angiogenesisD:maturationFig.1.1-1 脳血管の脈管形成(vasculogenesis)と血管新生(angiogenesis)(図A・B・C・D)
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