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111発生 developmentちされ,血管の退縮や融合を経て血管系が形成される.この平滑筋細胞には中胚葉由来と神経堤由来(つまり外胚葉由来)のものがある.成体におけるangiogenesisは,既存の壁細胞が脱落し,内皮細胞のプロテアーゼ活性が促進され,基底膜や間質を消化して内皮細胞が遊走・増殖し,管腔を形成する.血管新生過程の内皮細胞の先端の細胞は,target cellと呼ばれVEGFの濃度勾配で遊走するが,増殖はせず,その手前の内皮細胞はstalk cellと呼ばれVEGFの刺激により増殖する.また内皮細胞と壁細胞の接着と静的状態維持はAng-1(angiopoietin-1)/Tie2(tyrosine kinase with Ig and epidermal growth fac-tor〔EGF〕homology domain 2)系とTGF(transforming growth factor)-β系によってなされる.VEGFにより内皮細胞のAng-2産生が亢進し,Ang-1/Tie2系を抑制し,内皮細胞と壁細胞が解離していく〔安部 2008〕. 一連の過程でさまざまな増殖因子やサイトカインが関与し,その異常・欠損でさまざまな脳血管異常が起こることが知られている.そのなかでよく知られているものが,次項の遺伝性出血性毛細血管拡張症や毛細血管奇形である.angiogenesisの最も強いtriggerはhypoxiaと言われており,発生初期に急速に発育する中枢神経組織へ十分な酸素を送るために脳血管は発達・形成されていく.つまり受精初期には周囲のmeninx primitivaからの拡散diffusionで十分な酸素が供給されているが,神経溝さらに神経管が形成され脳室系が閉鎖されるときに,me-ninx primitivaの一部が脳室内へ落ち込み,脈絡叢 (choroid plexus)が発達する.しかし,終脳は発達を続け,拡散や脈絡叢からの酸素供給だけでは不十分となり,この脳に十分な酸素・栄養を供給すべく脳血管系が発達する.remodel-ingとmaturationの過程では,増殖因子やサイトカイン以外に接着因子や内膜に作用するshear stressやhyperoxiaが重要な役割を担っている.中枢神経系では中胚葉由来のblood island以外に神経堤neural crest由来の幹細胞が脳血管の血管発生に関与している.1.1.1. 動脈と静脈への分化 development to embryonic artery and vein 1998年にWangらが発生初期のangiogenesis期の原始血管叢内の動脈の内皮細胞には膜型リガンドのEphrin-B2が,静脈の内皮細胞にはチロシンキナーゼ型受容体Eph-B4が発現していることを報告した〔Wang 1998〕.つまり発生初期のinternal carotid arteryとその枝,dorsal aor-ta,umbilical artery,vitelline artery(卵黄動脈)にはEphrin-B2が,anterior/common/posterior cardinal veins,vitelline veinにはEph-B4が発現し,発生初期に遺伝的に動脈・静脈が決定されていることが分かった.しかし,胎生初期には可塑性があり,酸素分圧や血流・血圧などの環境因子で,動脈性の内皮細胞が,静脈性のそれに変化しうることも示された.発生初期の内皮細胞の動脈化は,まず,脊索(notochord)からのsonic hedgehog(shh)により各体節におけるVEGFが増加し,受容体Notchや膜型リガンドDll4(delta-like 4)の発現が増加する.さらに転写因子HeyやHersの誘導が起こり,その結果,Ephrin-B2の発現上昇(Eph-B4発現低下)が起こり,各体節の後方半分を通り背側大動脈へ移動するangioblastは,動脈化するとされる〔安部 2008〕.Notchシグナルが阻害されると内皮細胞はdefaultである静脈になる.このangioblastと異なり,神経堤細胞は体幹レベルでは,各体節の前方半分の腹外側路を通りmigrationするため,この両者は対照的である.

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