131発生 development 遺伝性出血性毛細血管拡張症は, a:繰り返す鼻出血nose bleed b: 粘膜・皮膚の毛細血管の拡張telangiecta-sia c:肺,脳・脊髄,肝臓などにある血管奇形 d: 一親等以内の親族(rst degree relative)に同様の症状があるといった特徴がある.診断基準は,これら4項目のうち,3つ以上あると確診(definite),2つで疑診(probable),1つだけでは可能性は低い(unlikely)とされる.この診断基準で,unlikelyとされても,HHTのgene carrierを完全に否定することはできない. 鼻粘膜のtelangiectasiaからの出血で鼻出血が起こり,消化管のtelangiectasiaからの出血で下血が起こる.上部消化管にも下部消化管にもtelangiectasiaが認められる.この消化管の病変は,隆起性病変でないため,バリウムによる間接検査では,病変を検出できない.内視鏡による直視下の検査が必要である.皮膚のtelangi-ectasiaは,頭皮,顔面,口唇,口腔粘膜,舌,耳,結膜,体幹,四肢,手,指などに認められるが,全身のどこにでもできる可能性があり,出血することもある.HHTの患者の50%に,肺,脳,肝の少なくとも一つに動静脈瘻がある.脳症状には,脳出血と脳梗塞・脳膿瘍があり,前者は脳動静脈瘻・脳動静脈奇形やそれに関連する動脈瘤・静脈瘤が原因で起こり,後者は肺の動静脈瘻からのR→Lシャントによる血栓・塞栓症が原因で起こる〔Krings 2005〕.脳動静脈奇形には,動静脈瘻のような直接のシャントの形態をとる場合もあれば,比較的病変の大きさは小さく,コンパクトな動静脈奇形の形態をとる場合もある.ほとんど動静脈シャントがなく,ぼんやりしたtumor stainのような小さな病変micro-AVMが,毛細血管相や静脈相で認められるだけのことがある.後者のような血管病変は比較的出血しにくいとされるが,MR検査での検出は困難であり,その真の出血のリスクは不明である.肺の動静脈瘻から呼吸不全になることもあり,またまれに胸腔内出血や喀血も起こる.肺の動静脈瘻は,栄養動脈の径が3mm以上あると,症候性になりやすく治療適応とされたが,最近はより小さな栄養動脈でも治療対象とされる.スクリーニングには,非造影のthin slice CTが有用である.肝臓にも動静脈瘻が認められ,hepatic artery - portal vein shunt,portal vein - hepatic vein shunt,hepatic artery - hepatic vein shuntなどがある.porto-systemic shuntがあれば脳のMR検査で基底核に左右対称にT1 high lesionが認められ,マンガンの沈着を示す.(Fig.1.2.1-1,Fig.1.2.1-2). HHTのtelangiectasiaや動静脈瘻は,他のsoli-taryの脳動静脈奇形の自然経過を考える参考になる.生下時に病変が存在するか,生後de novoで病変が現れるか,病変が時間とともに大きくなるか,のようなことに答えはないが,恐らく,生下時に病変が存在することはまれであり,de novoで病変が起こるのがつねであり,そのタイミングは通常,出生後であり,teen-agerのころが多いが,より年齢が上がってからでも起こり,また病変はstableとは限らず,大きくなることもあれば,まれにその逆もあると思われる. 1.2.2. マルファン症候群 Marfan syndrome フランス人のBernard Marfanにちなみ名付けられた症候群である.彼は1896年パリの医学会で,5歳のGabrielleという女児について報告している.Marfan syndromeは遺伝性の結合組織疾患で,常染色体優性遺伝をする.75%の患者が親からの遺伝であり,残る25%の患者が発生過程で新たに遺伝子異常が起こったと考えられる.発生頻度は3,000〜5,000人に1人とされ,男女の差はないとされる. 1型のMarfan syndromeは,第15染色体(15q21.1)にあるfibrillin-1(FBN1)遺伝子の変異が原因である.このFBN1は,水晶体の腱,大動脈や他の支持組織のelastinの基質を構成するmicrofibrilの形成をブロックする糖タンパクをencodeしている.2型のMarfan syndromeは,
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