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4刺激刺激頂点潜時頂点潜時開始潜時開始潜時波形波形図1誘発電位の基本的波形.刺激に対して一定の潜時と波形を持つ.刺激点から対象とする波の電位変動が始まるまでの時間を開始潜時,ピークの頂点までの時間を頂点潜時という.術中モニタリングの基礎と注意点2 第2章,3章の各論に先立って,術中モニタリングを理解するために必要な基礎的事項と注意点について述べていく.1誘発電位 術中モニタリングに用いられているのは基本的に誘発電位である.誘発電位とは,刺激によって引き出され,刺激と時間的に関連した一過性の電位変動をいう.したがって,刺激に対して一定の潜時と波形を有している(図1). 一般的に,感覚受容器,末梢神経,脊髄,脳などを刺激し,それぞれ離れた部位(大脳,脳幹,脊髄,末梢神経,筋など)に誘発された電位を記録する.2平均加算法 頭皮上に設置した電極でSEP(somatosensory evoked potential,体性感覚誘発電位)やBAEP〔brainstem auditory evoked potential,脳幹聴覚誘発電位,通称ABR(auditory brainstem response,聴性脳幹反応)〕を記録する場合,その電位の大きさは0.1~数μVと脳波の1/500~1/10程度しかなく,そのままでは背景脳波やノイズに埋もれてしまって,その電位を識別・評価することができない. そこでシグナルプロセッサを用いて波形の平均加算を行う. 1回ごとの電気刺激に対するSEP波形を図2に示した.赤丸部分に刺激で誘発された電位が存在するが,このままでは評価できない.前述の通り,誘発電位は刺激に対して一定の潜時と波形を有しているので,同じ刺激を繰り返し与え,刺激を起点としてその後の一定時間部分の平均加算を行えば,シグナルは同じ潜時で出現しているため加算されて増大し,背景脳波やノイズはランダムであるため加算により相殺されて平坦化する.結果として,刺激と因果関係のある電位のみを際立たせることができ,波形の評価が可能となる. 加算回数の目安は各論に記してあるが,SEPのように刺激で誘発される電位が比較的大きなものでは50~100回前後,BAEPのように小さいものでは500~1,000回程度必要となる. このとき,ノイズが少なければ加算回数はより少なくてす

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