402380321
8/12

2術中モニタリングを始めるにあたって11術中モニタリングとは 術中モニタリングとは,手術により傷害される可能性のある脳機能および脳神経機能を術中に監視する手術支援システムの1つである.手術操作による機能障害の可能性が生じるとただちに警告を発し,手術操作にfeedbackされることにより術後の機能障害を回避し得る.こうした狭義のモニタリングに加え,脳機能の局在や脳神経の同定・鑑別を行うマッピングも広義の意味でモニタリングに含まれている.2術中モニタリングの意義 術中モニタリングが可能な脳機能としては,運動,体性感覚,視覚,聴覚などがあり,脳神経では第1脳神経から第12脳神経までのすべてにおいてモニタリングが可能である. これらのモニタリングの意義は,術中に神経機能の異常が生じた場合に,その異常を迅速に探知することにある.探知した異常の原因を検索して解決することにより術後合併症の出現を回避し得る.一例を挙げれば,内頚動脈瘤クリッピング術を施行した自験例を対象とした検討で,運動誘発電位モニタリングを導入することにより,術後の運動麻痺出現率が,モニタリング導入以前の1/10にまで減少していた.モニタリングにより皮質脊髄路を灌流する動脈の血流不全を迅速に探知し,その血流不全の原因を術中に解除することが可能となったことによる.これこそが術中モニタリングの目的であり意義である. さらに,機能障害がないことを確認しながら術者が落ち着いて手術を施行できることも,良好な手術結果を得るうえで役立つ点である.もちろん,モニタリングをすれば術後の合併症をきたさないということではない.波形が消失したまま手術を終了せざるを得ず,術後に高度の機能障害をきたすことがある.しかしそうした場合でも,どのような手術操作が問題であったのかを認識して今後の手術成績の向上に生かすことができる.また,モニタリングが悪化していると告げられて手術を遂行することは術者にとって辛いことであるが,手術操作により障害が生じていることに気づかずに手術を終了し,術後に合併症に苦しむ患者さんの姿を見ることは,より辛いことである.3術中モニタリングの実際 「モニタリングをすると手術時間が長くなる」という話を耳にする.確かに,習得す

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る