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推薦のことば 脳血管内治療は,今や手術よりも先に考慮すべき治療となりました.私や本書の編者の杉生憲志先生は1990年代初頭からこの治療に携わってきましたが,隔世の感があります.特に血栓回収療法の効果は劇的であり,有効性を示すエビデンスも確立し,すべての国民が享受できる治療になるように法律も整備され,脳卒中センター認定が始まりました.この治療の術者は,脳神経血管内治療専門医または脳血栓回収療法実施医の資格が必要で,ともに脳血管造影200例の経験が要件にあります.以前はこれが300例の経験だったのですが,血管造影検査数が減っていることを勘案し,引き下げられました. 血管内治療専門医試験は,筆記の後に口頭試問と血管モデルを用いた実技試験があります.そこで最近実感することは,受験生のカテーテル操作技術の低下です.受験者数は増加の一途ですが,明らかに下手になっています.血管造影検査の経験数の引き下げが関連しているのかもしれません.検査数は減少し受験生は増加しているので,今やこれは貴重な経験です.ぜひ本書を一読してから検査に臨むことを強く勧めます. 現在ほとんどの脳血管疾患は,CTとMRIで診断がつきます.血管造影は,血管内治療の適応や方法を決めるために行われることが多くなりました.しかし脊髄血管疾患は,血管造影を施行しないと診断がつかないことがいまだ多くあります.ただ脊髄血管造影は,関与する血管が多く,病変は微小で,症例数が少ないために,完全な脊髄血管造影ができている施設は数えるほどではないでしょうか.不完全な脊髄血管造影では,病変は見つかりません.脊髄血管疾患の症候は重篤で,適切に診断と治療が行われない場合の転帰は極めて不良です.本書では,脊髄血管造影についても詳述されており,ぜひともこれを一読し,目の前の患者さんを助けてあげていただきたいと強く思います.筑波大学医学医療系脳神経外科 脳卒中予防治療学講座教授松丸 祐司3

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