初版 序文 私は1987年に岡山大学(岡大)脳神経外科に入局した.当時,岡大では研修医のバイブルとして『神経放射線診断学入門』という本があり,新入医局員は全員がその本を購入して日夜勉強したものである.残念ながら現在は廃刊となったその本は,岡大脳神経外科で代々行われてきた神経放射線セミナーという勉強会をまとめたもので,当時の教授であり私の恩師でもある西本 詮先生の編による.そして,当時研修医であった現・岡大脳神経外科教授の伊達 勲先生の学年を中心に執筆されている.当時は岡大ローカルで読まれている教科書と思っていたが,全国の多くの脳神経外科医がこの本で勉強したと聞くにつれ,驚きとともに少し誇らしい気分になったものである. 今この本を手に取り,読み返して見るが,30年前とは思えない,現在でも通用する記述もあれば,当然ながらすでに時代遅れとなった部分もある.当時の序文の一部を紹介させていただくが,入局当時に恩師西本教授に「文武両道」で厳しくも温かくご指導いただいた想い出が,ありありとよみがえってくる. 暑い夏休みが終るとき,岡山大学医学部では脳神経外科のスタッフによる“神経放射線セミナー”が,最高学年の学四学生を対象に,金曜・土曜の2日間にわたり行われる.午前中には講義を行い,午後は2グループに分かれて実際にレ線フィルムを見ながら質疑応答を行う.(中略)数年前に始めたこのセミナーが大変な人気を呼んで,希望者が殺到し, とても30名という人数ではおさまらず, しばしば大幅にオーバーする盛況である. (中略)準備のため新入局の医師達は,セミナーの前1週間は毎日徹夜に近い勉強をするし,オーベンもこれに付合って寝食を共にするという具合で,2日目の実習終了後には,参加学生も講師達もへとへとに疲れてしまうのであるが,打上げ会でハッスルして大いに精気をとりもどすという次第である.(『神経放射線診断学入門』朝倉書店,1985)6
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