若き脳神経外科医の常として,研修医時代から手術同様,血管撮影に興味を覚え,自分なりに人一倍研鑽したつもりであった.そのせいもあってか,1991年から本格的に脳血管内治療の道を志すこととなった.その後,20年余にわたって脳血管内治療に携わってきたが,今でも言えることは,脳脊髄血管撮影はその基本であり,CTやMRI等の画像診断が発達した現在でも非常に有用な診断法であるということである. 一方で,侵襲性がCTやMRIより高いことは一目瞭然であり,その適応も限定され,最近では一人の医師が行う脳脊髄血管撮影件数は減少していることも事実である.教育的な側面から見れば,脳血管内治療を行ううえでその基礎として血管撮影は重要なステップである.換言すれば,血管撮影がうまくできない術者に脳血管内治療ができるはずがないのである.しかし,経験の少ない若い医師に教科書を読んで勉強しろと言ったものの,最近では脳脊髄血管撮影の良い本がないことに気がついた.そこで,ないのであれば,われわれで記そうと,そう30年前に岡大で行われたように……という発想で本書はスタートした.一方で,血管解剖の教科書には多数の良本が存在しており,本書は血管撮影の実践的なテクニカルな面にフォーカスすることにした.脳脊髄血管撮影に興味のある方に,肩を張らずに読んでいただき,「この本でカテーテルがうまくなった」と言っていただけるようなプラクティカルな内容・構成を心掛けたつもりである. どうせなら,岡山で開催するJSNET2015に合わせて出版しようと企画してスタートしたが,筆の遅い外科医のご多分に漏れず,執筆はJSNET総会の準備とも相まって遅々として進まず,メディカ出版の担当編集者には多大なるご迷惑をおかけした.この場をお借りして,お詫びと最大級の感謝を申し上げたい. 最後に,本書が脳血管内治療を目指す皆さんのバイブルとは言わないまでも,マニュアルとなっていただけることを願いつつ,序文とさせていただく.平成27年10月岡山大学大学院脳神経外科准教授杉生 憲志7
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