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序  文v「超」入門 手術で治すしびれと痛み 私は約30年間,脊椎脊髄外科医として診療を行ってきましたが,近年,絞扼性末梢神経疾患に注目し,積極的に診断,治療を行っています. 多くの外科医は,脊椎手術を行っても,しびれ・痛みが改善しない症例に遭遇したことがあると思います.その原因としては,①脊椎疾患に末梢神経疾患が併発していた,②症状の原因が脊椎病変でなく末梢神経疾患であった(診断の誤り)ことも推測されます.そのため私は,末梢神経疾患に注目して診療することが重要であると思い,画像中心の診察から身体に触れる診察への大転換を図りました. 絞扼性末梢神経疾患は画像による診断が難しいため,画像中心の診療に慣れている脊椎・脊髄外科医や脳神経外科医,整形外科医には近寄りがたい疾患であるかもしれません.しかしながら,末梢神経疾患は日常臨床で最も遭遇する機会が多く,脳脊髄疾患に併発することも稀ではありません.そのため,積極的に末梢神経疾患にかかわりを持たなくても,最低限の知識を持つことは大切なことです. 絞扼性末梢神経疾患は,手で身体に触れる診察を行い,特徴的な症状や病歴を聴取すれば診断は容易です.本書では,診断のポイントを述べた後,シェーマや手術写真を多用して手術法を平易に解説しました.初心者にも,わかりやすい内容になっていると思います.また,本書の特徴は,腰痛,下肢痛の原因である上殿皮神経障害,腓骨神経障害,足根管症候群等の殿部,下肢の絞扼性末梢神経疾患に関する記載が豊富なことです. 本書がしびれ,痛み診療に従事している脳神経外科医,整形外科医,ペインクリニック医,神経内科医,専門医を受験しようとしている研修医のお役に立てれば幸いです. 最後に,私の脳神経外科入局時の教授であった故・都留美都雄先生(大正9年10月13日~平成5年10月26日,享年74歳)に本書を捧げたいと思います. 2016年8月 釧路労災病院脳神経外科・末梢神経外科センター 井須 豊彦

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