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2「超」入門 手術で治すしびれと痛み1総 説1末梢神経障害の疫学・診断・治療・手術1絞扼性末梢神経障害 末梢神経障害は罹患率が高く,日常臨床で遭遇する機会が多い.時に強い症状によりADLへ大きく影響する.末梢神経障害は画像による診断が難しく,近年の画像重視の診察に慣れてしまうと,一見,近寄りがたく思ってしまうかもしれないが,頻度の高い疾患については特徴的な症状を知ることで,疑い病名を考えることはそれほど難しいことではない. 末梢神経(peripheralnerve)が靱帯や腱,線維骨性トンネルなどを通過する部位で,慢性的に機械的刺激を受け,神経障害を生じたものを絞扼性神経障害(entrapmentneuropathy)と言う.軽症のものも含めるとその頻度は極めて高く,一過性のものを含めるとわれわれも一度は経験しているのかもしれない.その診断や治療に関しては,依然十分な検討がなされていない点もあり,多くの課題が残っている. 加齢に伴い増加する末梢神経障害が,脳疾患や脊椎,脊髄疾患に併発することは稀ではない1︲8).脊椎,脊髄疾患に併発した場合,併発した末梢神経障害に気付かない場合,おのずと治療成績が落ちてしまう.また,脳血管障害慢性期などに末梢神経障害を併発しQOLへ大きく影響していることもあるため,積極的に末梢神経疾患へかかわらずとも,目をそらさない限り,否応なしにかかわってしまうものである1,2,4︲9).Check!末梢神経が靱帯や腱,線維骨性トンネルなどで障害されたものを絞扼性神経障害と言う.2末梢神経障害の頻度 長野らは,全絞扼性神経障害の中で手根管症候群が51%と最も多く,次いで肘部管症候群が28%であったと報告している10).一方,橘らは,しびれ外来を受診した末梢神経障害621例中,手根管症候群が344例と最も多かったが,次いで足根管症候群が83例,肘部管症候群が77例であったと報告している11).また,手術症例1,228例においては,正中神経が803例と最も多かったものの,やはり後脛骨神経(足根管)が236例,尺骨神経が115例と続き,思いのほか下肢の絞扼性神経障害が多かったと報告している11).日本医科大学千葉北総病院脳神経外科 ● 金 景成
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