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3「超」入門 手術で治すしびれと痛み1章●総 説1.末梢神経障害の疫学・診断・治療・手術 釧路労災病院脳神経外科のデータでは,2009(平成21)年より2015(平成27)年(7年間)の絞扼性神経障害の全手術件数は1,024例であり,その内訳は上殿皮神経剥離術407例(40%),中殿筋除圧術194例(19%),足根管開放術166例(16%),腓骨神経剥離術142例(14%),手根管開放術94例(9%),尺骨神経除圧,移行術10例(1%),外側大腿皮神経剥離術6例(0.6%),高位正中神経剥離術4例(0.4%),ギオン管開放術1例であった.全症例の内,腰殿部,下肢の末梢神経障害の手術は上肢の手術より圧倒的に多く,915例(89%)であった12)(5章1「釧路労災病院脳神経外科での絞扼性末梢神経外科手術」〔p.140〕参照).この頻度の差についてはさまざまな要因が影響している可能性があるが,腰下肢の末梢神経障害が一般的に治療されていない背景が影響しているのかもしれない.3末梢神経障害の症状 末梢神経障害を診断するうえで,患者が訴える症状は最も大切である1,3,11).症状は,障害された神経の支配領域の感覚障害やしびれ,痛み,支配筋の筋力低下,筋萎縮などである(図1~4).しびれはさまざまに訴えられるが,介入が必要となるものではビリビリと刺激性のものが多い印象があり,Phalentestなど,絞扼部で神経へ負荷をかけることにより症図1 末梢神経のデルマトームA:上肢 B:下肢z1-Az1-Bz4-Az1-Az1-Bz4-Az1-Az1-Bz4-AAB尺骨神経正中神経正中神経橈骨神経橈骨神経内側前腕皮神経上殿皮神経中殿皮神経下殿皮神経外側大腿皮神経外側腓腹皮神経内側腓腹皮神経内側足底神経外側足底神経浅腓骨神経深腓骨神経脛骨神経の内側踵骨枝腓腹神経伏在神経後大腿皮神経大腿神経閉鎖神経陰部大腿神経外側前腕皮神経(筋皮神経の終枝)外側前腕皮神経(筋皮神経の終枝)
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