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3●ある日の某国・防衛医科大学校医局にて研修医A 今日,慢性硬膜下血腫のBさんが元気で退院しました.歩けるようになって,Bさんとご家族にも,ものすごく感謝されました.教授M それはよかったね.Bさんは,A君の初めての手術症例だったね.研修医A はい.オーベンのC先生の指導で穿頭血腫除去術とドレナージ術を行いました.教授M 私も,30年以上前にはじめて手術させていただいた患者さんは慢性硬膜下血腫だったよ.自分がはじめて治療した患者さんが元気になるのは感動的だよね.ところで,A君.慢性硬膜下血腫はどうしてできるか説明してごらん.研修医A えーと,高齢者で軽微な頭部外傷後2〜3カ月して起こります.教授M 軽微な外傷から,どうして慢性期に硬膜下に流動性の血液が溜まるのかね.指導医のC先生は教えてくれなかったの?研修医A 特に,何も教わりませんでした.教授M C君は仕事熱心だが,勉強しないのが欠点だね.ところで,正常状態では硬膜下腔は存在しないと知っているかい?研修医A えっ? 先生,脳萎縮のある人ではCTで硬膜下腔が普通に見られますよ.教授M 実は,電子顕微鏡などで調べてみると,硬膜とくも膜の間にはdural border cell layerという層が存在していて,両者間のいわゆる硬膜下腔は,正常では存在しないという説があるんだ.このdural border cell layerは2〜3層の細胞から成る層であり,硬膜のような膠原線維を含まないで,細胞同士が弱く結合しているだけなんだ(図1左).だから,人為的に硬膜をくも膜から剥がすと,このdural border layerの細胞間で剥がれて,硬膜とくも膜の両方にdural border cellが残るのが硬膜下腔と言われているのだ.研修医A Dural border cell layerなんて言葉,初めて聞きました.教授M C君に,知っているか聞いてごらん.研修医A 先生,性格悪いですね.C先生が知っているわけないでしょう.教授M 勉強しない奴をいじめるのが仕事でね,ひひひひ…….話を戻そう.慢性硬膜下血腫が高齢者に多いのは,脳の萎縮が存在するため,この硬膜とくも膜間に存在する慢性硬膜下血腫の発生機序を知っていますか研修医A教授M

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