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Burckhard F. Kommerell(1901-1990)はストラスブール(当時はドイツ領)に生まれ,9歳から19歳までシラー音楽院で学び,ピアニスト兼作曲家として活動していた.しかし第一次世界大戦で敗北したドイツの経済は破綻し,ピアニストとして生計を立てるのが難しくなり,チュービンゲン大学医学部に入学し,医師となる.ボストンのタフツ医科大学で甲状腺ホルモンについて研究し,ドイツに帰国.ドルトムントで放射線科医として働く.有名なKommerell diverticulumはこのときに発表した論文である.第二次世界大戦後はハイデルベルクで開業.62歳で引退後はピアニストおよび作家として活動した異色の放射線科医であった.Kommerell22心臓側より順番に右総頚動脈,左総頚動脈,左鎖骨下動脈,右鎖骨下動脈が起始する.本症例でも見られるように,右総頚動脈と左総頚動脈はしばしば共通管として起始する.はじめに 胎生期の大動脈弓は左右6対あり,それの退縮過程の異常が右側大動脈弓などの正常異型や奇形を惹起する.胎生期初期の大動脈弓の発生過程において,必要な血管の退縮や離断が起こらない場合に発生する気管,食道を取り巻く異常は総括して血管輪(vascular ring)と称され,これら退縮した部分の断端にあたる部分は 動脈瘤の非常にできやすい部位となる.正常でも変異でもこれらの部位には注意を払って画像診断する必要がある.異所性右鎖骨下動脈 異所性右鎖骨下動脈(aberrant right subcla-vian artery:ARSA)は右鎖骨下動脈が左大動脈弓の第4分枝として右総頚動脈,左総頚動脈,左鎖骨下動脈より遠位部の下行大動脈から起始し,通常食道の後面を左下から右上方に斜めに走行する大動脈弓の形成異常である(Fig. 1). 腕頭動脈の代わりに右総頚動脈が大動脈の第1分枝として独立して分岐し,右鎖骨下動脈は左鎖骨下動脈より遠位で後方に単独で分岐する1-3). その走行から,retroesophageal right sub-clavian arteryと呼ばれることもある.健常人の0.5〜2%にみられる,大動脈弓の先天奇形としては最もよくみられるものであり,成人の異所性右鎖骨下動脈の3D-CT画像Fig.11治療上問題となるaccess血管の奇形,variant発生学:血管の発生A. 大動脈転位,abberant田中 美千裕症例では通常は症状を呈することなく,偶然の機会に発見されることが多い.臨床的には種々の先天性心疾患と合併することが報告されており,小児期にはARSAが食道を後面より圧迫することで嚥下障害(dysphagia luciria)を呈することがあり,気管を圧迫して気道狭窄をきたす場合には外科的治療が必要となる4-6). 左胸郭で分岐した右鎖骨下動脈は80%が食道
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