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Preface7 脳血管内治療は40年以上前に他分野のカテーテル治療の適用に始まり,独自の進化を遂げてきました.当初の非常にごつくて使いにくかったカテーテルやガイドワイヤーが,径,強度,コーティングなどが著しく改良され,現在は極めて安全なものとして広く普及しております.また新しいコンセプトに基づく治療技術やアプローチ,周術期の管理法,新しい塞栓物質などの治療デバイスなどが次々に生み出され,その発展はまさに日進月歩の勢いであります.一方,撮影装置の進化による,解像度,3D,4D技術の開発などにより,病変の詳しい血管構築や血流動態も把握できるようになってきました.これらの進歩は低侵襲治療としてのメリット以外に,実際に安全で効果の高い治療法として,観血的治療に匹敵するほどの信頼し得る治療オプションとして確立されるに至りました.好評価に後押しされて患者側からのニーズが急増し,それに呼応するように,医療者側もこの治療法の将来性について極めて大きな希望と期待を抱き,習得希望者が増えてきました. しかし,一方で臨床における成果が喧伝されすぎるあまり,治療原理や基礎知識よりも,数を多くこなし,良い治療成績を上げることこそが治療医としてのミッションのような風潮が生まれてきました.また,最新のデバイスをより早く取り入れて競争の先頭に立つことが,専門医としてのステータスのように思われています.このような現場至上主義の考え方は,企業の宣伝または受け売りによる扇動にのっているだけと見なされ,多くの場合,そこにはサイエンスの裏付けが乏しいため,ただの「技術屋」や「職人」との批判がされてきました. しかしながら,わが国の脳神経血管内治療医は,病態解明のための実験モデルの作成やシミュレーション,独自の治療技術の開発,血管解剖の追求,医工連携に基づく新しい塞栓物質やアプローチの開発など,科学的なリサーチマインドを失わずに,臨床ばかりでなく地道な「脳血管内治療学」の刊行にあたってNeuroendovascular Therapeutics
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