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19第章1第1話てんかん診療のよくある誤解と困りごと 全身けいれん時の対処法 ―救急カートには割り箸を? 当直当番の初日、A先生はまず救急診察室にあいさつに行き、救急カートの中を点検させてもらうことにしました。医師なら誰もがご存じと思いますが、救急カートとは救急医療で使う、一般には赤い色の金属の箱のことで、下にはキャスターが付いています。上は作業用テーブルになっていて、3〜4つの引き出しがあり、救急で使用頻度の高い道具や薬品が厳選されて保管されています。 A先生が驚いたのは、その救急カートにポツンと置いてあった割り箸でした。寿司の折り詰めに付いてくるような、ごく普通の割り箸だったそうです。A先生「この割り箸は何のために使うのですか?」看護師「けいれん患者が来たときのためです」A先生「?!」看護師「患者が舌を咬まないように、口に挟むのです」A先生「割り箸を直接、口に入れるのですか?」看護師「私たち看護師がガーゼで包んで、医師に手渡すことになっています」A先生「?◎△$♪×¥○&%#!」 てんかん診療にもともと詳しいA先生は、この病院の看護師や病院幹部にきちんと理由を説明したのち、救急カートから割り箸を撤去してもらったそうです。 どの病院でも救急外来においては、さまざまな原因による全身けいれん患者が、頻繁に搬送されてきます。この総合病院救急室ではこれまで何年もの間、何十例もの患者が、ギーッと歯を食いしばっている状態にもかかわらず、ガーゼで包まれた割り箸を口の中に入れられていたかと思うと、ぞっとします。患者の歯が折れることもありますし、挿入する施術者の指を負傷をすることもあります。 今度もし、テレビドラマや映画でそんなシーンを見つけたら、テレビ局や映画配給会社に掛け合って、「良い子は決してマネをしないように」というテロッ

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