402380630
4/14

4 脳SPECTパーフェクトガイド序文 ―脳神経外科医の立場から 脳神経外科医は患者の病歴,臨床症状から病変を予測して,確定診断のために画像診断を行うことが多い.画像を読影するときは,病変の検出,その質的診断,さらにその治療を常に考えている.症状があっても病変が検出されなければ,ある程度の経験がなければ診断の確定には自信が持てない.頭痛は脳神経外科外来を受診する主訴で最も多いものであるが,片頭痛などの一次性頭痛では画像診断で異常が検出されないため,画像診断を主な診断のよりどころとしている脳神経外科医の関心は高くない. 脳血管障害や頭部外傷の神経救急の急性期では,通常はすぐに結果が出て,出血の見逃しが少ないCTを撮像する.時間的余裕があり,より解像度の高い精密検査としてMRIがある.くも膜下出血,脳梗塞など脳血管病変が疑われれば,3D-CTAや血管造影などの脳血管の精査にいく.腫瘍か炎症性病変が疑われれば造影MRIなどを考慮する. 画像診断は目で見てわかる,ビジュアルに訴える方法である.異常の検出としては,頭部CTにおける急性期出血,拡散強調画像における急性期脳梗塞のように,病変のみが浮き上がり,強調される画像が有用性が高く,研修医,当直医でも見逃しにくい.私が医師となったのは昭和の終わりで,MRIが臨床に出始めた頃であった.当時のMRIは低磁場で画像解像度も低かったが,CTでは検出できない異常を検出できる画期的画像診断方法であった.物理学者とメーカーの努力により,FLAIR,MRA,DWI,T2*,SWI,MRS,DTI,DKI,NODDI,MR nger printingなど,さまざまな撮像方法が臨床応用されてきている. 核医学検査は古くからある検査で,CTやMRIがない時代は気脳写,脳血管造影とともに代表的中枢神経画像診断方法であった.CT技術の応用により核医学画像もplanar imagingからSPECTとして断層画像となり,さらに正常データベースとの比較,統計解析画像が発展してきた.しかしSPECTが機能画像であり,画像解像度がMRIなどより低く,病変の検出を求める臨床医からの関心を集めてこなかった. 本書は,臨床でよりSPECTを活用していただくために企画した.PETの書籍は多数あるが,SPECTに特化した書籍は本邦初と自負している.現時点ではSPECTは一般臨床病院に広く普及しているが,PETは一部の施設のみである.今後,PETの発展が期待できるが,核種の保険適用も進んでおらず,臨床現場でSPECTが活躍すべき時代はしばらく継続するであろう.本書が,SPECTの臨床現場での活用,応用,さらにSPECTの研究に貢献できれば幸いである.監修,編集,執筆にご協力いただいた各先生,企画から出版までお世話になったメディカ出版・岡哲也様に感謝します.2018年1月筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター/水戸協同病院脳神経外科 柴田 靖

元のページ  ../index.html#4

このブックを見る