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v このたび,(株)メディカ出版のご尽力にて,『大脳白質解剖入門』が出版の運びとなった. 私は脳悪性腫瘍やてんかん外科は専門ではなく,脳血管障害の外科や頭蓋底外科などを専門としており,脳深部白質の解剖的知識は乏しかった.2012年に防衛医科大学校に赴任してから,解剖学の小林靖教授のご厚意で医局員を対象とした解剖実習を行う機会を得た.主に頭蓋底外科手術の練習が目的であったが,小林教授から「脳も勉強してください」と言われた.白質解剖にはKlingler法で処理した脳を用いること,脳神経外科領域では巨人Gazi Yaşargil教授とUğur Türe教授が研究をされており,大脳半球外側面からと内側面からの白質線維束の剖出方法を確立されていることを知った.実は日本には白質解剖の教科書がないことにも気が付き,実際の剖出方法が分からなかった. そこで,2013年夏にYaşargil教授とTüre教授がともに在籍されているIstanbulのYeditepe大学にお邪魔して,白質解剖の基礎を教えていただいた(写真).早速,厚かましくも防衛医大で白質解剖実習を始めたが,その都度説明と実演することが苦痛となり,あくまでも防衛医大脳神経外科研修医用に大脳白質解剖方法とビデオからなるテキストを作成した.これを参考にすれば初学者にも基本的な白質解剖である「Lateral approach」と「Medial approach」が可能となった.このことをメディカ出版の編集者にお話ししたところ興味をもっていただき,今回の教科書を作る運びとなった. また,単に白質解剖だけでなく大脳白質解剖に必要な知識やtractography,さらには機能解剖に基づく脳神経外科手術をも包含することによって,より広く神経科学に携わる方々の勉強の助けとなる教科書となるように藤井正純先生のご尽力にて総合的な『大脳白質解剖入門』が完成した次第である. この教科書が,神経科学を学ぶ先生方の大脳白質への興味を持たれることのきっかけになれば望外の喜びである.なお,Josef Klingler(1888-1963)がナチズムの嵐の吹き荒れる1930年代のヨーロッパで大脳解剖に励み,その功績の一部がPernkopfの『臨床応用局所解剖図譜』のある秘密に関連している可能性を最後に付記しておく.平成31年1月,防衛医科大学校の寒い教授室にて防衛医科大学校脳神経外科学講座森 健太郎序 文2013年夏,IstanbulのYeditepe大学にて.左より,筆者,Yaşargil教授,Türe教授.

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