10血栓回収療法 Technical Tips患者搬送(救急車)と院内発症対応のコツ1岩手県立中央病院 木村 尚人 脳梗塞に対する機械的血栓回収療法について,多くのエビデンスが確立している.それに伴い機械的血栓回収療法は,rt-PA(recombinant tissue-type plasminogen activator)静注療法を含む内科治療に続けて行うことで機能的転帰が改善することが示され,標準的治療になったと考えるべきである. 転帰改善に関連する因子としては,時間のみではなく臨床症状と画像所見の解離であるclinical-image mismatchに基づく患者選択により,治療適応が拡大しつつあるが,時間の要素が大きく関与する. 機械的血栓回収療法を行うためには24時間,週7日稼動する体制,また患者到着後に速やかに治療に移れる体制が必要である.機械的血栓回収療法が保険収載された当初はIMS III等のRCTで否定的な論文が多く,いわゆる「ホノルルショック」の時代であり,有効性よりも安全性の観点からMRIでの閉塞血管の確認およびDWIで虚血巣の確認を行っていた1).しかしながら,MR CLEANを皮切りに種々のRCT(randomized controlled trial)で機械的血栓回収療法の有効性が示され,いわゆる「ナッシュビルホープ」の時代となった2).HERMESのサブ解析でNNT(number needed to treat)が2.6と有効性が高いにもかかわらず,4分に1%ずつ自立生活ができる患者が減ることも報告され,いかに多くの症例を迅速に行うかが問われるようになり,時短のためMRAもしくは造影CT,いずれか早いmodalityでの血管評価から速やかに機械的血栓回収療法に移行するのが流れとなった3). 市中の一般病院では他科との兼ね合い,少人数の医師による神経救急対応の必要性,MRI,CT,DSA機器の共有使用,メディカルスタッフのオンコール体制など,1診療科のみでは解決できない問題が存在する.自院における自院機械的血栓回収療法の有効性の体制に合わせたシステム構築と急性期脳梗塞に対する体制整備について述べる. 一般病院で機械的血栓回収療法の時短を図るためには自院のルールを大きく変えることは難しく,機械的血栓回収療法に合わせた体制を作れない場合もある,そのため自院のweak pointを見極め,本来作りたい体制とのずれを把握することが第一歩である.そしてそのweak pointを工夫,運用で補うことでシステムを構築する必要がある. 市中病院で機械的血栓回収療法を行う場合,以下のような問題点が想定される.① 血栓回収に携わらない医師がファーストタッチする.② 平日の日中は定期検査のためにCT,MRI装置を長時間止められない.③ 夜間,休日は院外からオンコールの技師,看護師を呼ぶ必要がある.などである. このような状況にある病院は決して少なくないと考えられ,それぞれのweak pointに対する工夫が必要である. 当院では以下のように対応している.①血栓回収の当番を決める 脳神経当直とは別に当番表を作成する.その際,スタッフ同士の連絡はSNSでのグループ投稿とするとよい.「JOIN」などでは個人情報を掲載可能であるが,一般的なSNSの場合には患者の詳細情報は送らないようにする.それでも,血栓回収療法見込み患者がどのぐらいの時間で来院するか,誰が駆けつけるかなどが一斉配信され情報共有できるため,極めて有用である.②CTAやMRAによる血管閉塞確認をスキップする 血管閉塞の確認が大きな時間のロスとなり得機械的血栓回収療法体制の整備(院内体制に合わせたプロトコルの確立)
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