脳神経血管内治療は,新しいデバイスが次々に導入され脳神経外科領域では最もホットな領域の一つです.手技としては,親カテーテルの挿入,治療用カテーテルの病変部への導入,治療(再開通,塞栓,血管拡張等),カテーテルの抜去というプロセスで終了するわけですが,それぞれのプロセスでさまざまなことが起こり得ます.そのときにどうするかということを,読者の皆様に考えてもらいながら,血管内治療に対する知識と理解を深めてもらおうと,本企画を思いつきました. 私も,年齢とともに,自分自身が手洗いして術者に入る回数は減り,そのぶん外からモニターを見ながらあれこれと指示を出すことが多くなってきました.前任地の和歌山労災病院では,数年前から,記録係がiPadを用いて血管内治療の手術記録をその場で作成するようになりました.このシステムが導入されて,しばらくすると,術者が治療中にトラブルに陥ったり,手技が進まなくなったりすると,そのときの小生のつぶやき(ボヤキ?)を記録係が克明に記録するようになってきました.また,何も言わないと,「先生,ここはこれでよかったのでしょうか?」と後から聞かれ,そのコメントもiPadに記載されてゆくようになりました. 2014年9月に昭和大学藤が丘病院に異動するにあたり,今までiPadに記載された血管内治療手術記録を見返してみると,自分でも素晴らしいと思うコメント,「こんなことしゃべったか?」という言葉,「ちょっとパワハラかな?」という指導が,術中にその場で記録された画像とともに,臨場感を持って血管内治療の記憶としてよみがえってきました.本企画のプランナーとして,読者の皆様に,1例1例を実際に自分が術者になったつもりで,ドキドキ,ハラハラしながら体験していっていただきたいと思います. 最後に,この企画にご協力いただきました昭和大学関連脳神経外科・血管内治療グループ,和歌山血管内治療グループ,小生が治療を一緒に担当させていただいた全国の先生方,また,快く推薦文を引き受けてくださいました私の敬愛する滝 和郎先生,開頭術のパートナーでもあり,良き釣り友達でもある水谷 徹先生に心より感謝いたします.2019年10月昭和大学藤が丘病院脳神経外科教授寺田 友昭5脳神経血管内治療 次の一手序文
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