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4 心臓カテーテル治療は,進歩の著しい医学のなかでも近年もっとも目覚ましい成長を遂げた分野の一つです.そして心臓カテーテル治療の歴史を振り返る際に,ドイツはこの分野の発展に極めて大きく貢献しています. ドイツ・ベルリン出身の医師であるWerner Forssmannは,1929年に世界で初めて心臓にカテーテルを通し,この業績により1956年度のノーベル生理学・医学賞を受賞しました.1977年には同じくドイツ人医師であるAndreas Grüntzigが世界初の冠動脈形成術(バルーン拡張術)を行いました.その後,冠動脈疾患に対するカテーテル治療は大きく発展を遂げ,デバイス開発という点でも金属ステント,薬剤溶出性ステント,そして生体吸収性スキャフォールドの開発へとつながっています.さらにカテーテル治療は冠動脈疾患だけでなく,近年では,末梢血管・大血管の治療,そしてカテーテルアブレーションとして不整脈の分野にもその適応を拡大しています. Grüntzigが世界で初めて冠動脈形成術を行ってから40年,現在のドイツではカテーテル治療の新たな潮流として弁膜症に対する治療が活発に行われています.弁膜症などいわゆる構造的心疾患に対するカテーテル治療はStructural Heart Disease interventionと呼ばれていますが,この分野の治療もドイツは世界でもっとも浸透率が高く,本書のテーマであるMitraClip(アボット バスキュラー社),TAVI,そして今後導入が予想される左心耳閉鎖デバイスなど非常にたくさんの治療が行われています. 僧帽弁閉鎖不全症の治療デバイスMitraClipは,2008年にヨーロッパでCEマークを取得して以降,急速に普及し全世界ですでに4万例以上の症例が蓄積されています.そのなかでもドイツではヨーロッパ全体の症例数の約7割が行われており,世界最大の症例数を誇っています. そしてドイツ,ヨーロッパから遅れること約10年,いよいよ日本に はじめに

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