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1疫 学1膵癌の疫学……… 3整推定罹患率は男性が10万人あたり15.9人、女性が10.4人とやや男性に多く3)、2014年における年齢調整死亡率2)でみた死亡年齢中央値は約67歳で男性は10万人あたり13.3人、女性は8.5人と報告されています。75歳未満年齢調整死亡率で見た場合、男女ともに北日本にやや死亡率が高い傾向があるものの際だった地域性は認められません5)。 一方、諸外国と比較すると、10万人あたりの死亡率である年齢調整死亡率は中位にあります6)。諸外国でも男女差が認められており、2007年時点において男性は5~9人、女性は3~6人と報告されています。年次推移を見ると、多くの国で男性は横ばいかやや増加、女性が若干増加傾向であり、本邦を含めて先進国の傾向といえます。 リスクファクターについては他稿(p.8~参照)に譲りますが、諸外国との比較検討において、嗜好におけるリスクファクターの1つとされている煙草については、禁煙が早くから進められてきた英国・米国・オーストラリアにおいて男性膵癌の年齢調整死亡率が横ばいにもかかわらず、肺癌の死亡率の低下には及びません。このことから、そのほかの疫学的なリスクファクターの影響も考えられ、近年の過体重や肥満の増加が年齢調整死亡率の動向に影響している可能性があるとされています。一方、諸外国との比較では食事の種類による影響は認められず、このような全国規模での調査ではリスクファクターの1つとされている膵炎やアルコール過摂取は人口動態統計上では一部に過ぎないことから、明らかな相関は確認できていません。 米国ではSEER(Surveillance, Epidemiology, and End Results)プログラムによる大規模な癌患者の登録が行われ、本邦と同様、膵癌の解析が可能となっています7)。それによると診察時の進行度は、局所にとどまるlocalizedが9.4%、リンパ節転移を来しているregionalが29%、遠隔転移を来しているdistantが52%と報告されており、本邦と同様、発見時に半数が遠隔転移を来していることが報告されています。それぞれの5年生存率はlocalizedが29.3%、regionalが11.1%、distantが2.6%と報告されています。罹患率を人種別にみると黒人の罹患率が高くその次に白人、ヒスパニック系と続きます。また、診断数と死亡数を比較すると徐々に死亡数割合は減っているものの、5年生存率は2008年の時点で7.7%に過ぎません。 膵癌に対するステージを含めた詳細な大規模疫学解析は、日本膵臓学会が中心となり膵癌登録を3 本邦での膵癌登録による疫学全国がん罹患モニタリング集計2006-2008年生存率報告(国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター,2016).独立行政法人国立がん研究センターがん研究開発費「地域がん登録精度向上と活用に関する研究」平成22年度報告書初診時に半数が遠隔転移を来しているものの、局所の癌に限れば5年生存率は40%弱と比較的良好。a)臨床進行度内訳2006-2008年診断例[男女計]1009080706050403020100限局全部位膵臓領域遠隔不明(%)1009080706050403020100限局全部位膵臓領域遠隔(%)b)部位別臨床進行度別5年相対生存率2006-2008年診断例[男女計]図1… 本邦におけるa)初診時進行度、b)進行度別の5年生存率
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